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ヒトのモチベーションを高めるメカニズム【動機付け理論まとめ①】

「あの人は、どうやったらもっと意欲的に仕事をしてくれるんだろう?」

「職場での部下のやる気が低いように見えるが、どうすれば改善するんだろう?」

「最近、仕事に対するモチベーションが湧かなくなってきた…」
 

同僚や部下の仕事ぶり、または自分について、このような疑問を持たれたことがある方も多いのではないでしょうか。
 

今回の記事では、仕事面も含め、ヒトの「動機付け(モチベーション)」に関する学術研究や動機付けのメカニズムについてご紹介します。
 

「動機付け」の研究は組織行動に関する主なトピックの一つで、その基本的な関心領域は“ヒトが何らかの行動を取る理由(原因)とそのやり方(手段)”にあります。
 
動機付けという言葉の定義はさまざまありますが、例えば以下の通りです。
 
『ある目的を達成するための個人の努力の強度、方向、および持続性を説明するプロセスである』

『動機付けは行動の強さと方向、および人々が特定の方法で行動するように影響を与える要因である』
 

まとめると、動機付けとは「何らかの目的を達成するため、人々の行動の方向性を決定すること」と考えられます。
 

そして、そのような動機付けを行なう要因は、大きく内発的動機付け外発的動機付けという二つのカテゴリに分類されます。
 
内発的動機付けは、例えば仕事そのものから得られるものであり、仕事における自律性の度合いや仕事への興味、同僚との関係などの心理的報酬に関連しています。

一方、外発的動機付けは、給与・インセンティブ・仕事環境などより客観的な外的報酬と結びついています。

そのうえで、動機付け理論は大きく三つの主要なカテゴリに分類され、それぞれ以下にて概説していきたいと思います。
 


◎コンテンツ・セオリー
 

これは動機づけに関連する”要素”について説明し、”何が”人々を動機づけるのかに焦点を当てた古典的なアプローチです。

有名な理論の一つは「マズローの欲求階層モデル」です。

マズローは、人は低次の欲求(例:生理的欲求)に満足すると、その次のより高次の欲求(例:安全の欲求)を求めるようになると提唱しています。

この考え方は非常に直感的で広く参照されていますが、批判も存在します。
例えば、実証的な証拠が不十分であるという点です。
さらに、欲求の順序の普遍性には疑問があり、人々は異なる優先順位を持つことがあります。
この点について、マズロー自身もピラミッドの階層の順序には変動がある可能性を示唆しています。
 

コンテンツ・セオリーに関する二つ目の主な研究は、「二要因理論」です。

ハーズバーグは、被験者に対するインタビューを通じ、仕事への満足感や不満につながる二つの異なる要因、すなわち「動機付け要因」「衛生要因」を特定しました。

雇用主やマネジャーは、動機付け要因を促進し、逆に衛生要因を減少させることで従業員の動機づけを管理することができると考えられます。
 

三つ目は、マクレランドの「欲求理論」です。

彼は、マズローとは対照的に、“欲求”とは満たされるべき条件ではなく、それ自体が動機付けの要因であると主張しました。

彼が特定した三種類の主な欲求は「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」(後に、「回避欲求」が追加)で、それぞれ実証研究による裏付けは得ているものの、欲求の度合いを測定するのが難しいため実際にそれらをどのように現実に適用するのかは明確ではありません。

すなわち、人は異なる種類の欲求を同時に満たそうとして単一の行動を取ることもあれば、一種類の欲求を満たすために複数の異なる行動を取ることもあります。

これは、上記三つの欲求を個別に考慮・検討することが難しいことを意味してます。
 

最後は「自己決定理論」についてです。

他の理論では、主な結論として、「人々は、内発的報酬を高いレベルで得られる一方、外発的報酬も十分に提供されることで満足する傾向がある」と主張しています。

しかし自己決定理論は、個人的な喜び、興味、罪悪感やプレッシャーといった“自己決定的な要素”に焦点を当てています。

内発的動機と外発的動機に加え、「無動機」(=ある行動に対する動機が欠如していること)という状態を定義するとともに、外発的動機付けを自決定の度合いに応じいくつかの種類に分類しました。

結果的に、自己決定理論は、「人々は、自分がしたいことをしていると感じるときに高く動機付けられる」と主張していると考えられます。
 

コンテンツ・セオリーの他、プロセス・セオリー、ジョブデザイン・セオリーという二つのカテゴリがありますが、それらの詳細はまた次稿にてご紹介させていただきます。
 

参考文献:
Armstrong, M. and Taylor, S. (2014) Armstrong’s handbook of human resource management practice. 13th ed. London: Kogan Page Limited.
Gagné, M., Forest, J., Vansteenkiste, M., Crevier-Braud, L., Van den Broeck, A., Aspeli, A. K., Bellerose, J., Benabou, C., Chemolli, E., Güntert, S. T., Halvari, H., Johnson, P., Indiyastuti, D. L., Molstad, M., Naudin, M., Ndao, A., Olafson, A. H., Roussel, P., Wang, Z., and Westbye, C. (2015) ‘The Multidimensional Work Motivation Scale: Validation evidence in seven Languages and nine countries’. European Journal of Work and Organizational Psychology, 24, pp. 178-196.
Robbins, S. P. and Judge, T. (2023) Organizational behavior. 19th ed. Harlow, United Kingdom: Pearson.

Mullins, L. J. (2011) Essentials of organisational behaviour. 3rd ed. Harlow, United Kingdom: Financial Times Prentice Hall.
Tóth-Király, I., Morin, A. J. S., Bőthe, B., Rigó, A. and Orosz, G. (2021) ‘Toward an Improved Understanding of Work Motivation Profiles’, Applied Psychology, 70, pp. 986-1017.
Woods, S. A. and West, M. A. (2020) The psychology of work and organizations. 3rd ed. Australia: Cengage.

 

Credit: Photo
By Andrea Piacquadio
By Denniz Futalan from Pexels

 

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一橋大学経済学研究科を修了後、三菱UFJ信託銀行へ新卒入社。その後トーマツ イノベーション(デロイトグループ)、楽天での人材・組織開発経験を経て、2022年夏よりイギリスのAston大学へ留学しビジネス・スクールにてHRMを専攻。卒業後、「働くヒトのモチベーションアップ」に寄与するべく企業・組織を人事面からサポートしたいと考え、Asian Identityへジョイン。シニアコンサルタントとして人事制度コンサルティングやインハウストレーニング/ワークショップ等での登壇を担当。
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