「キャリアの旅 –My Career Journey-:私がタイに辿り着くまで」
はじめまして。今回初投稿となります、Asian Identity(以下、AI)の山内 崇(やまうち たかし)です。本記事では、私がタイ拠点の当社でHRコンサルタントとしてのキャリアをスタートするまでの経緯について、キャリアの旅(Career Journey)と題してお話しできればと思います。
過去、私は3つの日本企業を経験した後、30代半ばで社会人留学のためイギリスに一年半ほど滞在し、大学院卒業後に現在のタイ・バンコクへ渡ってきました。私なりのキャリアの歩み方についてご紹介します。
現在はHRコンサルタントとして人事面から組織のご支援をさせていただいておりますが、思い返すと、私がもともと“ヒト”に興味を持ち始めたのは、私が中学生の頃でした。当時の私は思春期真っ只中(いわゆる、中二病)で、尾崎豊の世界観に陶酔しながら自分の周りのあらゆることを憂い勝手に悩んでいるようなイタイ人間でした。そんな中、授業の一環で「自分の興味のある職業」について調べる機会があった際、将来は自分と同じように何らかの悩みを持つ人たちをサポートするような仕事がしてみたいと思い、心理学を専門とする臨床心理士について調べてみたことがきっかけでした。
なんとも安直な思考ではありますが、その時以来、無事に(?)思春期を終えた後も引き続き人間心理(ヒトのココロ)に関心を持ち続けることになりました。
そんな私ですが、社会人としてのキャリアは、HR領域ではなく日本国内のある銀行での企業年金制度管理業務という、やや特殊な専門性を求められる仕事からスタートしました。しかし、当時の銀行という伝統的な日本型雇用慣行に従った組織運営のあり方に次第に問題意識を抱くようになり、もともと持っていたヒトへの関心も相まって、「働く人を支援して、みんながモチベーション高く働ける社会作りに貢献したい」と思うようになりました。
そこで、企業向けに研修サービスを提供しているコンサルティングファームへ転職し、新規/既存営業・研修講師登壇・組織開発支援などを経験しました。自分のやりたいことができるというありがたい環境でしたが、トレーニングや人材・組織開発領域だけでなく他の人事ファンクションでの業務経験も積みたいと考え、次のステップとしてグローバルIT企業の人事部へジョインすることにしました。
三社目では、グローバルの各拠点マネージャー(外国籍)向けに日本HQの企業文化を浸透させるためのトレーニングの企画や、組織全体で心理的安全性を高めるための1on1ミーティング実施促進など、全社的な人事施策プロジェクトへ参画させていただき、非常に貴重な経験を積むことができていました。ところがそんな矢先、突然ある事業部署への異動辞令が出され、唐突にHRのキャリアパスから外れてしまうことになったのです…
“ヒトのモチベーション向上を支援する” ということを自らのモチベーションとしていたため、この出来事は自分の中で大きなターニングポイントとなりました。またちょうどCOVID-19が流行し在宅勤務が主となったことで、時間的な余裕ができたことも影響し、自分自身のキャリアを改めて見つめ直す機会となりました。そして、自分のやりたいことを通して如何に社会へ貢献できるかということを考えた結果、海外の大学院(ビジネス・スクール)でHRについて学び、専門知識を習得するとともに自らの問題意識に対して深く研究してみたい、と思うようになりました。日本では、まだプライベートで社会人留学をする人も多くなかった一方、社会的には「学び直し・リカレント」といった機運が高まっていたこともあり、そのタイミングでチャレンジをすればキャリア面での差別化にも繋がるのではないかとも考え、会社を辞めて留学することを決断しました。
留学中はいろいろと学ぶことが多く、非常に充実した時間を過ごすことができたのですが、とりわけ私生活でも学校生活でも“異文化理解”の重要性を痛感したように思います。
例えば、イギリスへ引っ越してすぐ、新居であるアパートの洗濯機が壊れて作動しないというトラブルが発生しました。原因は新設時の施工不良で配線の一部に問題があったようなのですが、仲介してもらった不動産屋を通して修理業者へ依頼してもなかなかアポイントが取れなかったり、アポが取れても当日にすっぽかされたり、約束の時間通りに来てくれなかったり、「また来るね」と言ったきり二度と連絡が取れなかったり…結局、壊れてから修理が完了するまで4か月ほどかかってしまいました(それでも完全には直らず、乾燥機能は最後まで使えないままでした…)
そんな「時間や約束にルーズ」な傾向は、大学の同級生たちにも見受けられました。授業の開始時間を大幅に超えて入室してくる人がいるのはもちろん、自分が遅れてきたために聞き逃してしまったような内容であっても遠慮や躊躇いもなく講師へ質問をする姿勢には、当初非常に驚きました。しかし、私がそれ以上に驚いたことは、そのような日本人にとってはある意味不躾とも捉えられる生徒たちの態度に対し、講師の方たちはいっさい怒りや不満な態度を見せることなく、質問に対しても繰り返し丁寧に回答していたことです。普段から多様なバックグラウンドを持った生徒たちと接している講師陣にとって、異文化を理解したうえでそれを受容し、適切な対応を取るということは日常のことなのだと感動しました。
私も講師たちの態度を真似て、グループワークに理由も無く遅れてきたり成果物の提出期限を守らないようなチームメイトたちに真摯に接しようと心掛けたのですが、言うは易く行うは難しで、常にそれを実践するということは難しかったです。。そして、そんな私といつも気持ちを共有し支えてくれていたのが、心優しいタイ人の友人でした。そのおかげもあり、私はタイ人の優しくおおらかな人柄や必要以上に細かいことを気にしない国民性に非常にポジティブな感情を抱くようになり、これがタイでの就職を決めた一つの大きな要因になった(!)と言っても過言ではないかもしれません。
もちろん、最終的に現職を選択した理由はそれだけではありませんが、「働くヒトのモチベーション向上支援を通して日本社会を盛り上げていきたい」という想いを、日本文化にも馴染みの深いここタイでAIのコンサルタントとして実現していくために、これからも邁進していきたいと思います!
Credit: Photo by Porapak Apichodilok from Pexels