移動体験が思考を深める
先日、家族で登山をしてみました。
登山と言っても、2時間程度のハイキングの延長のようなものです。時々岩山をよじ登ったりするような場面もありましたが、登山を通じて心身がリフレッシュできる良い時間でした。
一つ、登ってみて気づいたことがあります。
ひたすら無心で登っていると、普段考えていることがいつのまにか繋がって、頭の中がすごく整理されたのです。頂上に登ったら思わずメモを取り出して、考えたことを書き留めてしまったほどです。
休日ですし、特に仕事のことを考えようと思って登ったわけではありませんでした。ですが、頭を空っぽにしていることで、逆に、気になっていることが整理できる。そんな体験ができました。思わぬ「セレンディピティ」(偶発的な発見)でした。
書籍『思考の整理学』の中に、「三上」という言葉が出てきます。
これは昔の中国の歌人が、優れた考えが良く浮かぶ場所として、「馬上」=馬に乗っている時、「枕上」=寝ている時、「厠上」=トイレに入っている時、の3つを挙げたという意味です。なんとなく現代のわれわれにも当てはまることがあるような気がします。
今回の登山の体験は、「馬上」に近いと感じます。つまり、移動するプロセスで人の思考が深まることがある、ということです。
実際、体を動かすことは脳の発達に良い影響があることはよく指摘されています。体を動かすことが記憶をつかさどる「海馬」や、思考をつかさどる「前頭葉」を発達させることに繋がるそうです。
振り返って考えてみると、コロナ以降で「まとまった時間をかけて移動する」ということがかなり減ったな、と思います。
コロナ以前はなんといっても「出張」がありました。特に飛行機や新幹線に乗っている時間というのは、考え事には最適の時間として個人的にはお気に入りの時間でした。スマホも遮断され、本を読むか考え事をするしかない時間、というのはとても貴重でした。(時々映画も見ますが)
コロナ以降自室に籠もって長く仕事をするようになり、時間当たりの生産性は上がったように思いますが、一方で、知的な生産性についてはやや疑問を感じています。どこかアイデアに乏しかったり、作業は進んでもアウトプットと呼べるものはあまり生み出せていないような気もします。
やはり人間は時には外に出て、体を動かすことで発想が豊かになるのかもしれません。そんなことを気付かせてくれた登山体験でした。
皆さんは、思考を促進するような体験は日常にあるでしょうか。
ネスレ、リンク & モチベーション、グロービスを経て現職。
現在はタイを拠点としながら「多様性の調和」をミッションに掲げ、アジア各国でのコンサルティングや講演活動を手がける。
バンコクにおいてタイ人向けビジネス漫画「Su Su Pim! (がんばれピム!)」を執筆、販売。
アジア流のリーダーシップを提唱する『リーダーの悩みはすべて東洋思想で解決できる』(WAVE出版)を出版。
ORSCシステムコーチング 応用コース終了
Hofstede Insight Organizational Culture (組織文化)認定ファシリテーター