人事制度改定の“惜しい”打ち手
Asian Identityの藤岡です。
弊社はバンコクを拠点とする組織人事コンサルティングファームとして、様々な組織の人事課題の解決のお手伝いをさせて頂いておりますが、昨今、特にコロナをきっかけにご相談を受けることが多くなったトピックが人事制度の改定です。
もちろんコロナ以前も人事制度は大事なトピックではありましたが、皆がオフィスや現場に来ていた時は、ある意味大体・なんとなくで評価ができていたという側面もありました。
それがコロナによって働き方が多様化した結果、パフォーマンスを評価することが難しくなったり、コストを削減する中で限られた原資をより効果的に、メリハリをつけて配分したいといったニーズが高まったり、またより多様な選択肢に触れることになった従業員に対して、きちんと将来を示してリテンションをしていかなければならなかったりといったニーズが高まり、人事制度の改革に手を入れられる企業様が増えてきております。
この人事制度を改定して、より従業員にとって公平公正な仕組みにし、キャリアパスを明確にし、モチベーションを高めていくような仕組みにしていきたい、といった意図自体はとても素晴らしいものだと思いますし、弊社も全力でそれを応援しております。
ただ時々この情熱が“惜しい”方向に向かってしまう例がありますので、今回はそちらを共有したいと思います。
人事制度の改定の一番のポイントとして上がってくることが多いのが「評価の公平公正さの担保」です。
ともすると印象で評価が決まってしまったり、なぜこの人が高い評価でこの人が低い評価なのかよくわからないといった状態を明確にしていきたい、と言ったニーズです。
そして、このトピックに対してよくある“惜しい”打ち手というのは、「評価評点の付け方をより細かく精緻に定義をしていこう」といった流れです。
もちろん評点をつける上で、「どのような項目に対してどのような行動をしていればどういった点数がつくか」というところを明確にしていくことは、とても重要なことです。
ただしこれには限界があります。
考えていただくと分かるかと思いますが、従業員の皆さんの仕事の全てを完全に言語化するといったことはとても膨大な作業ですし、ましてやそれを良い状態・悪い状態・普通の状態といった形で分けて、全て記載し切るとなるとその量は更に増えていきます。
また膨大なだけではなく、実際に評価に使う際には、その定義の表に記載されていない行動であったり状態であったり、といったことがたくさん出てくるということも想像に難くないかと思います。
しかし、実際にはこの評点の定義を明確にしていくというのはわかりやすい作業ですので、真っ先に取り組まれがちです。(特にこれはエンジニアであったり、営業であったり、物事を数値で捉えたい方に多い傾向かと思います)
強調しますがここを明確にしようとする動き自体は決して非難されるものではありません。が、それを確実に完全にすることは無理である、といったところが“惜しい”打ち手である、という所以です。
では、ともすると評価者によって点数の甘辛が分かれがちなこの「評価」といったものについて、評価の点数の定義を精緻化する以外にどのような打ち手があるかというと、ここは「ソフトスキルから攻める」ということになります。
つまり、評価者に対して評価の付け方のスキルを付与するということです。これはともすると仕組みではなく人の能力によって制度の運用を担保するといった形ですので、パッと見ると不安定なように見えます。
ただ、前述の通り全ての業務を言語化するといったことが実質不可能である以上、これが打ちうる最善の手になることが多いです。
具体的には、評価者を集めて評点の付け方が分かれるような過去の事例を持ち寄り、その場合にそれぞれの評価者だとどのような理由で何点をつけるか、といったところを共有していく。
こういった地道な作業を何度か繰り返すだけでも評価者による甘辛や評点の付け方が揃っていき、最終的に公正公平な評価が実施できるといった事例があります。
是非、現在より公正公平な評価制度を作りたいという風に思っていらっしゃる人事ご担当者・経営者の皆さんにとりまして、仕組みを明確にするといった方法以外にも、ソフトスキルから公正公平感を作っていく方法があるといったことで何かしらのヒントになりましたら幸いです。
Photo by Nguyen Dang Hoang Nhu on Unsplash