AI NEWSLETTER Vol.27
AUGUST , 2019
ニュースレター第27号です。
おかげさまでAsian Identityは創業から5周年を迎えることが出来ました。多くの企業さま、パートナーさまよりメッセージも頂戴しました。本当にありがとうございます。今回は、代表の中村から、改めてのAsian Identityの想いをニュースレターでお伝えしたいと思います。
Asian Identityは5周年を迎えました。
人材の問題点を指摘するだけでは人は育たない
私(Jack)のタイでの原体験は、とある日本人マネージャーの発言です。
2014年頃、私はある日系企業の工場に呼ばれて人材育成の相談を受けました。とても立派な工場で、その中の社長室のようなところに私は通されて、社長の話を聞くことになりました。
「うちのタイ人は全然だめだ。計画は立てられないし、報告も出来ないし、基本的なことが全然出来ていない。今まで色々な教育をしてきたが全然良くならない。外部の先生にお願いして、一から鍛え直してもらいたい・・・」
私はそれを聞いて正直、嫌な気持ちになりました。もちろん社長が言っていることもある程度正しいのかもしれません。しかし、自分の会社の大切な社員についての文句を、外部の人にまくしたてる姿勢にやや違和感を持ちました。
恐らくこの社長はこういう調子で、普段部下の指導に当たっているのでしょう。また、本人がいないからと言って「あいつはダメだ」という評価を別の経営陣にも話しているのかもしれません。でもそうした悪口(ゴシップ)といのは、本人が目の前にいなくても必ずどこかで伝わり、組織の信頼関係を壊していくものです。
経験上、こうしたネガティブなものの見方をするリーダーが率いる組織では、どれだけ研修などを行っても人や組織は成長していきません。これは家庭でも同じで、親が子供のダメなところばかり指摘すると、その子は自尊心の乏しい大人になっていきます。
強みと弱みは表裏一体です。「仕事が速い」という強みは「細部が疎かになる」という弱みをはらみます。また、「発言が少ない」という弱みがあるように見える人は、実は「深く考える力がある」という強みを持っているのかもしれません。
最初から良い悪いがあるわけではなく、人にあるのは「特徴」だけです。上司や周囲がどのように接するかどうかで、その人の「特徴」は「強み」に変わります。
人を育てる立場の人は、常に相手にポジティブな仮説を持ち、「その人材にどういう強みがあるか」「どういう経験をさせればその強みは開花するか」「どういう言葉をかければその強みに気づけるか」を常に意識しないといけません。
こうした経験を通じて、私はタイにおいて人材育成(人のポテンシャルを開花させること)をしていくべきだ、という想いを持つに至りました。また、同様のニーズはタイのみにとどまらず、東南アジア諸国全体にあるとも思いました。
Asian Identityという言葉には、タイ人を始めとするアジアの人々の、Identity(その人らしさ、ポテンシャル)に目を向けて開花させていきたいという想いと、組織のIdentity(組織の共通の目的や理念、価値観)を伝えることで想いをすり合わせて、強い組織を作っていきたいという願いを込めています。
「アジアの時代」にあった人事を
私たちは、アジア生まれのHRファームとして、欧米系のファームや日系のファームとも立ち位置を異にしています。
代表の私は日本人ですが、日本的な視点のみに陥らず、柔軟な視点を持ってサービス提供していく事をモットーとしています。そうした姿勢がご評価されて、欧米系ファームとも、日系ファームとも違う価値をクライアントから認めて頂けていると思っています。
人事には原理原則があります。人間という動物が集まって行う活動には、心理学や社会学に基づく一定の法則があるからです。そうしたことは、グローバルに共通する要素としてつねに意識する必要があります。(弊社では「人事の学校」でそうしたナレッジをご提供しています!)
同時に、国には「文化差」があります。よくグローバルといいますが、「グローバルという国」があるわけではありません。多くの組織はその組織が地理的に存在している場所の文化的影響を大きく受けます。
また、どれだけグローバル化が進んでも、「グローバル人」という人種は存在せず、何かしらの文化的バックグラウンドを持っている個々人の集合体であることは変わらないはずです。
人事というものは従業員の日々の行動全般に関わりますので、その国の文化や従業員が持つ文化的背景をよくよく理解して設計しないといけません。
アジアと言っても一括りにできませんが、欧米諸国との大きな違いとしてアジア諸国には、全体の調和を重んじる文化的背景があります。過度な個人主義や、競争主義は敬遠される傾向にあります。
そうしたことを元にして、例えばアジア諸国で人事や組織を考えるうえで、以下のようなことを意識することが大切だと私は思っています。
・愛情:組織の中に家族のような心理的繋がりを作る
・調和:人間関係や調和を重視する
・楽しさ:皆が笑顔になるようなエンターテイメント性を重視する
・柔軟性:計画の精緻さよりもスピードや臨機応変さを重視する
・言語:英語ですべてを行おうとせず、現地語も交えながら施策を行う
人事の原理原則を押さえながらも、こうした「味付け」を重視して施策を設計していく事が、成功のポイントだと考えています。
国を超えて、ココロが繋がる瞬間を作る
先日、あるクライアントで企業理念の浸透をサポートしました。
社長である日本人が長年考えていたものの、社員であるタイ人とインド人に伝えられていなかった思いをがありました。それを弊社のサポートでそうした社長のビジョンを言語化し、ワークショップを設計し、伝える場づくりをしました。
その結果、従業員からは「社長の気持ちが聞けてよかった」「ビジョンに向けて皆で頑張る」と、とてもポジティブな反応があり、組織が「動き出す」感覚を作ることができました。中には泣き出すタイ人スタッフもいて、それを見て社長も涙を流したのでした。
こうした「国籍を超えて心が通じ合う」瞬間を多くの組織に作っていくことが私たちの仕事なんだ、と確信しました。私たちの経験や技術を生かして、もっとこうした場を作っていきたい、と決意を新たにしました。
5年という歩みはまだまだ短く、決して誇れるものではありません。さらに努力を続け、アジアで事業を行う多くの組織のサポートをしていきたいと思います。お読みいただき有難うございました。