AI NEWSLETTER Vol.19
OCTOBER , 2018
企業インタビュー特集
「PROUD OF WORKING AT NTN」
企業インタビュー特集、第4回目は本年創業100周年を迎えた軸受(ベアリング)製造大手NTN株式会社のタイ拠点、販売機能を持つNTN Bearing-ThailandのMD後藤様と人事のChalermchai様にお話を伺いました。(以下敬称略)
「Proud of working at NTN」NTN Bearing-Thailandの社員として働くことを誇りに思ってもらえるような文化を創りたいと組織開発、人材育成に奮闘するお二方のご様子をお届けできればと思いす。
AI:まずは簡単に自己紹介をお願いします。
後藤: 大学を卒業して1991年にNTN株式会社に入社をしました。私は三重県出身なのですが、NTN の主力工場が三重県の桑名にあり、大学への通学時にいつもNTNの看板を見ていたことや材料工学を 専攻していたこともあり、あらゆる産業に使われている軸受に自分の学んだ分野が活かせるという意味で自然にNTNの入社を決めていました。当時はバブルで就職活動もそこまで大変ではなかったです。 入社後は静岡で自動車部品の研究開発を8年ほど経験した後、アメリカのデトロイトに4年駐在、そこから日本の設計部で10年間設計の仕事をし、タイには2016年の4月に来ました。今はタイNTN販売株式会社のMDとして計70名ほどの組織を見ています。
CHALERMCHAI: 国立大学の法律学部を卒業後、一 度法曹の世界で仕事をしました。弁護士や法曹の世界はフェアに仕事ができると考えていたのですが実際は異なり、自 分がおかしいと感じることも正しい方向に持っていくようにいかなければならない仕事が多く、違和感があったため法曹の世界を離れることにしました。その後、運よく人事という仕事に巡りあいました。日系企業やタイ企業で人事のスタッフとして経験を積んだ後、採用という領域の仕事を深めるべく、大手のリクルーティング会社で6年ほど勤務しました。人のことを理解することや人が何に興味があるのかを観察し、把握することに興味をもったので。その後、NTNの人事マネージャーとして勤めるようになりました。今は6年目です。
AI:後藤さんがタイの拠点に来られて、初めて組織を見て CHALERMCHAI さんとどのようなお話をされたんでしょうか。
CHALERMCHAI: 後藤さんが覚えているか分からないのですが、後藤さんが来て間もないころに「自分は組織 をよくするためにやりたいことがたくさんある」と直談判した記憶があります。
後藤: 覚えています。(笑)
CHALERMCHAI: 私が入社してからは、HRのシステムの整備やオフィスの移転など基盤を整えることに奔走しており、組織を強くすることや従業員の育成などに目を向けることができずにいました。後藤さんが来たタイミングでようやく色々と取り組める、と思って強く訴えかけたことを覚えています。増えすぎたポジションの整理やキャリアパスをイメージできるような評価や昇進の仕組み、人事制度の整備などですね。従業員教育もそうです。あとは各ポジションの採用の際に必要なコンピテンシーを決めて、それにそった質問項目を設計するなど。この採用の件は、まだ後藤さんに相談してませんでしたね。(笑)やりたいことが沢山あり、今後藤さんと相談しながら進めています。
後藤: 頼もしい限りです。(笑)
私が就任した当時、私の人材育成で大切にしてほしい考え方を伝えようとマネージャー全員を集めたことがあります。 13人いるマネージャーにある図を見せながら、部下の目線を理解できるような上司であってほしいというメッセージを伝えました。通常のピラミッド型組織では現場のスタッフが情報を上にあげる、ニュートンの法則にしたがうと重力の関係で頑張って情報というボールを上に投げないといけない。スタッフにとってそれはとても大変なことであると。情報が上がってこないのは部下のせいではない、と伝えました。マネジメント側の人間が自分と比較して 経験の少ない部下の目線まで下がって部下とコミュニケーションすることが必要だと伝えました。
あとは、「仕事は楽しくなくてはいけない」ということ。これは私のポリシーです。タイ語では「サヌック」です。サバイではないですよ。では、何が仕事を面白くさせるか、それは適切な目標設定と成功体験の積み重ね、この2つだと思っています。
CHALERMCHAI: 後藤さんはいつも、「会社の目標は、すべての従業員がハッピーになること」だと言ってます。そして仕事は楽しむもの。サバイではなく、サヌック。このような考え方が浸透しつつあり、従業員も気軽に意見が言えてアイデアを出してくれるように環境が変わりつつあるのを感じています。僕もこの考え方は好きですね。
後藤: 仕事が面白ければ、お客様への接し方も変わってきて業績はアップしていくと信じています。目標設定で大事なのは、個人の能力の+10%くらい、頑張って手が届くような目標設定をすること。 このような目標を達成し続けることができれば、仕事は絶対に面白くなります。また、部下に対して上司は部下の能力を見極め、部下が今の能力の+10%の目標を設定できるように指導する必要があります。あとは上司が部下の目標達成だけでなく、成功体験を積ませてあげられるような業務のアサインができるか、それが上司の役割だと思っています。
CHALERMCHAI: 人事面では、全ての取り組みが一貫して筋が通っているものを作りたいと思っていますし、それが僕のポリシーです。フィーリングだけで、あれをやろう、これをやろうとするのではなく、ひとつ取り組みをするにしても、なぜこれをする必要があるのかを徹底して考え抜き、実行するにしても、なぜこのアクションが効果的なのかを論理的に説明できることが大事だと思っています。例えば、なぜポジションを整理しなければいけないのか。それについても僕は目的と手段とメリットをちゃんと説明できます。
AI:人材育成について、他に何か方針はありますか
後藤: 昨年までパワーポイント研修など、実務面でのスキルを上げる研修が中心だったのですが、今年以降はマインドセットの従業員教育にシフトしています。販社なので、今一番取り組んでいるのは「CUSTOMER FIRST」という顧客第一主義というマインドセットの醸成ですね。顧客第一主義といっても顧客の厳しい要求にあっさり何でも答えるという意味ではないです。顧客と自分たちがどう WIN-WINの関係を築けるかということです。お客さんの言っていることの真の意図を理解し、お互いに納得いくような解決策を提示できる。ネゴシエーションとかも含まれますね。
CHALERMCHAI: 「CUSTOMER FIRST」がマインドとして身につくと、お客様からより選ばれる存在になると思います。「相手の心を自分の心に入れて考える」というタイの言葉があるのですが、相手の立場に立って考えるということ。電話一つとるのでも、お客様を待たせず、素早くとる、そんな当たり前のことが徹底できる組織であってほしいです。あとマインドセットとしてはポジティブシンキング、プラス思考、オーナーシップもありますね。
後藤: 私自身、実はネガティブな人間だったんですけどね。(笑)タイに来る前に設計部署に10年居たことがあって、基準の厳しい、ルール順守の環境に慣れていました。タイにきて、MDという立場で責任がありつつも色んなことにチャレンジしていけることにとても面白みを感じています。
AI:意欲ある人事のCHALERMCHAIさんですが、CHALERMCHAIさんに期待していることがあれば教えてください。
後藤: 一つは僕には言えないタイ人の希望や不満などを吸い上げてほしいということです。
彼の部屋に従業員が良く出入りして相談している様子を頻繁に見かけます。僕に全部言わなくていいのですが、本当のところを知っている、引き続きスタッフがアプローチしやすい存在でいてほしいです。そして、必要なことを考えて実行し、風通しのいい組織にしてほしいです。これが私の願いですね。
あとは、昨年、実はタイで初めて従業員満足度調査を行いました。従業員全員に対し、会社、上司、同僚との関係性や仕事、待遇など様々な観点で50ほどの質問を設計して会社や組織に対して思うところを点数で付けれるように、また記述できる箇所も設けて調査したんです。結果としてはおおむね良好だったのですが、やはりポジション、昇進制度などで従業員が何かしらの不満を持っていることが分かり、改善への取り組みを進めています。この取り組みを着実に一緒にやり遂げてほしいですね。
CHALERMCHAI: 従業員がアプローチしやすい人事として心がけているのは、マネージャーとしての帽子をかぶって、机に座っているだけの人事であってはいけないといことです。役職は役職として大事ですけど、意見を取り入れやすいように壁を作らずオープンでいる。そう心がけています。調査についても色々な意見を集約してやらなければならないことが明確になりました。改善に向けて着実に取り組みを進めたいですね。
AI:人を育てる、人材育成の面白さや難しさについて教えてください。
後藤: 「褒めると叱る」のタイミングです。フルネームが後藤司郎なのですが、褒めるときはSHIROさん、叱るときはGOTOさんという二つの人格が自分の中に内在していて、それぞれのタイミングで人格を分けるようにしているんです。叱るときは、今からGOTOさんとして事実を基に伝え方に注意して、ただ叱るだけではなくSUGGESTION(こうした方がもっとよくなる)ということを伝えます。褒めるときは、SHIROさんとして精一杯の笑顔で感謝を伝える。出来るだけ沢山SHIROさんが出てきてほしいです。
あとは、どうやればメンバーが自ら考えて行動するようになるか、ですね。タイ人はクリアで細かい指示を欲していると言いますが、こちらも1〜10まで懇切丁寧に教え続けるわけにはいかない。なるべくヒントを与えて自分の頭で考えさせるようにしていきたいですね。
CHALERMCHAI: 難しさというと、やはり従業員のマインドや態度に良い変化を起こすことです。私はかつて同じ組織で働くメンバーのマインドや行動の変化を目にした経験があります。かつてとてもネガティブで心を閉ざしがちで会社の行事にもなかなか参加してくれなかったメンバーがいました。ある日、そのメンバーが大きな事故にあってしまったのですが、私自身で人事としてできる限りのサポートをやろうと医師やご家族に連絡をとったり、会社として何かできないか精いっぱい考えてサポートしました。結果、そのメンバーは私を信頼してくれるようになり、仕事の相談、改善の提案など人が変わったかのように周囲と接するようになりました。そういった変化を見るのはとても好きですね。そういったポジティブな変化を起こしていきたいです
AI:最後に、NTN-BEARINGの組織強化についての思いをお聞かせください。
後藤: 「PROUD OF WORKING AT NTN」を従業員に感じてもらうことです。タイは転職が多い社会だと言われますが、NTN-BEARINGで働くメンバーがここで働くことに誇りを持ち、楽しく成⻑できる文化を作っていきたいです。仮に転職者が出たとしても次に入社する人が困らないように引継ぎなどもしっかり仕組化したいです。転職してもNTN-BEARINGは良い会社だったなと思ってもらえるようにしたいですね。(笑)
CHALERMCHAI: 優秀な人、良い人がきちんと評価され、ここに残って⻑く働いてくれるような文化を作ることです。また、人事は各部署のパートナーとして各部署で起こる、人に纏わる悩みや問題を常に吸い上げて問題解決に伴走できるような存在でありたいです。会社のエンジンとなる役割を果たしたいです。
AI: 後藤さん、CHALERMCHAIさん「PROUD OF WORKING AT NTN」に向けて、お互いが 同じ方向に向かい協力してタイの組織をよりよくしたいという思いが伝わってくるインタビューでし た。ありがとうございました!
Future of Work: Employee Experience
EMPLOYEE EXPERIENCEによってPASSION・LOVE・COMMITMENTを作り出す
2018年10月4日にTHAI GLICO CO., LTD.のONSHUMA PUENGRUMPAN様、TOYOTA TSUSHO NEXTY ELECTRONICS (THAILAND) CO., LTD.のSRIUMPORN ON-AMPHON様、JTB (THAILAND) CO., LTD.のORAWAN MOONRUT様をゲストスピーカーとしてお招きし、EMPLOYEE EXPERIENCE, EMPLOYEE ENGAGEMENT向上をテーマとしたセミナーを開催いたしました。
組織におけるEmployee Engagementの向上を目的とし、従業員が組織やチームの成⻑にコミットするような環境や制度づくり、運用を行うか、といったことをテーマにディスカッションを重ねました。
各スピーカーの皆さんのお話を簡単にこちらのレポートでお伝えできればと思います。
車載用ソフトウェア開発を事業とされている Toyota Tsusho Nexty Electronics 社様では、上司と部下の間のコミュニケーションを非常 に大事にしています。上司は年に3回、自分の部下とのミーティングを実施し1年間の目標に ついて設定・振り返りをされています。上司からの期待を部下に伝える一方で部下から上 司へ育成に関する要望を伝えたりするなど、上司と部下がお互いの理解を促進する場とし て機能しています。大事にしていることとしては、一方的なコミュニケーションではなく、
相互に会話を交換するツーウェイ・コミュニケーションによって、上司と部下がよりお互いを理解する場として機能させること。互いの要望や期待を十分に理解した上で心地よく働ける、ともに成⻑できる関係性を築くことを大切にしています。
お菓子、アイスクリームの製造・販売をされているThai Glico Co., Ltd.社では今年からEmployee EngagementによってThai Glicoの組織を強くするという方針を定められたようです。Engagementの高さに比例して企業業績が上がるという調査データがあるそうですが、同社においても従業員が組織に対し強いEngagementを感じ従業員がハッピーに働けることで同社のタイでの業績も益々向上することを信じ、様々な取り組みを始めています。
今年に入り、Employee Engagement向上を目的としたチームを社内に作り、 Employee Engagement向上のための活動プランを企画したそうです。マネージメント層にEmployee Engagement の重要性を理解してもらうためのトレーニングを実施したり、Engagement向上を目的としたʻGreat Place to Work®ʼというアンケートを実施し て、今後のアクションプランを練っているそうです。
団体及び個人旅行サービスを主な事業とするJTB (Thailand) Co., Ltd.社では新サービスとしてEmployee Engagementの向上に役立つ可能性の高いThanks Collectというサービスを2018年9月ごろからタイでローンチしました。主にはこのサービスの内容や組織の関係性に与えるポジティブな影響についてお話頂きました。組織やチーム内でのコミュニケーションの機会が増え、メンバー間の相互理解が促進され従業員が組織やメンバーとより近い関係性を築いていけるようなサービスです。既に様々な企業から導入に関する問い合わせがあり、ニーズの高さや各社のEngagementを高める活動への注目の高さ を実感しているとのこと。
Asian Identityでは、従業員のEngagementを高めるためのコンサルティングやワークショップサビスを提供しています。Employee Engagementを高めるということは、いかなる組織において非常に重要なことだと感じています。従業員が心地よく働くことができるだけではなく、成⻑を実感できるような経験を組織や会社が提供し続けること。人事や上司は従業員個人の要望にしっかり耳を傾けていくことが重要です。
読者からの相談コーナー
Asian Identity の 人材コンサルタン トがマネジメントを担う方へのおスス メの本はありますか? (No.10)
信頼の原則〜最高の組織をつくる10のルール
英:The 10 Laws of Trust
壊れた組織、失われたメンバー同士の信頼。それは取り戻すことができるのだろうか。そんな疑問を元に手に取った一冊です。
今回ご紹介するこちらの本は2007年のバレンタインデーに約3000万ドルの損失を出した「最悪の事故」から復活を遂げたジェットブルー航空の会⻑、ジョエル・ピーターソン氏による実話をもとにした一冊です。同社が最悪の状況を脱し、北米No.1になれたのはなぜな のか、その理由を『信頼の原則』としてまとめています。
信頼の3条件、誠実さの3条件、尊敬を生み出す環境づくりなどの条件を元に組織間の信頼を強固にする方法ついて書かれています。一定の裏切りは避けられないものの信頼をマネジメントし、リスクを最小化するにはどうしたらよいか、そんな悩みにヒントをくれる一冊です。「卓越した企業を築こうとするとき、リーダーの仕事は単独で登頂を目指すことではない。むしろ部下たちが、自分たちだけでは到達できない頂上に立つのを助けるのがリーダーの仕事だ。」
AI college 11月開講予定講座のご案内
地頭力を鍛えるロジカルシンキング講座
「JI-ATAMA LOGICAL THINKING WORKSHOP」
11月1日(木)1日間講座・THB 6,000
タイ人向け、タイ語講座です。
予測不可能な時代には、インターネットで検索すれば得られる回答や既存の考え方に捉われず自らの頭で考えて答え を探し出す力が必要です。このような自らの頭で考え、新しい価値を生み出す力は思考のトレーニングで身に着ける ことが可能です。本講座ではケーススタディを通して、地頭力を表す仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思 考力といった考え方を学び、職場への実践に結びつけていきます。
日時: 11月1日(木)9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 6,000 THB (VAT別)
HR COLLEGE (人事の学校) 評価・報酬編
11月16日・17日(金・土)2日間連続講座・THB 12,000 (日本語&タイ語)
人事制度を体系的に学べるセミナーの評価・報酬編、2日間コースです。人事制度とは何か、という点から等級、評価 制度の設計、運用方法、報酬制度の設計方法などを主なトピックとし日本から人事のプロフェッショナルをお招きし て知見・経験を元にセッションを実施します。 日本人管理者とタイ人HRと一緒に学んでいただけるよう、2言語での運営となっています。
日時: 11月16日・17日(金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10) 料金: 12,000 THB (VAT別)