AI NEWSLETTER Vol.08
NOVEMBER , 2017
AI Newsletter第八回目になりました。今回は組織やチームの中で必要とされるコミュニケーションのあり方についてお話ししたいと思います。
「組織のコミュニケーションを変える」
組織のコミュニケーション
経営において、コミュニケーションが重要でないという人はいないでしょう。「経営者の役割」という名著を著した経営学者のC.バーナードによれば、組織とは「共通の目的」と「協働する意思」が重要であり、そしてそれを繋ぐのが「コミュニケーション」だと言われています。
つまり組織のコミュニケーションとは、まず「会社がどこに向かいたいのかという目的(ビジョンや戦略)」を伝えるものでなくてはいけません。社⻑メッセージ、方針発表、定例ミーティング、といったものによって企業はそれを実現します。そして同時に、「一人一人の協働する意思を引き出す」た めに、より少人数でのミーティング、1対1の面談、部門をまたいだコミュニケーション、などを行って個々のモチベーションを高めるわけです。
しかしながら、コミュニケーションは「伝えているのに伝わらない」といった「すれ違い」が常に起こります。さらに、多様性組織では文化や言語が複数存在するがゆえにコミュニケーションの精度が一気に下がります。そのため、東南アジアで仕事をしている我々のマネジメントはより難しいものと なっているのです。
「会議」が変われば会社が変わる
コミュニケーションには「公式コミュニケーション (Formal Communication)」「非公式コミュニケーション (Informal Communication)」
の2つがあります。公式コミュニケーションの代表的なものが、「会議」です。
会議には東洋的なスタイルと⻄洋的なスタイルがあります。東洋的会議スタイルでは、発言者の時間を尊重し、割り込むことはマナー違反とされます。また年⻑者や位の高い人を中心として会話が進行し、それに異論をはさむことはあまり良しとされません。これは日本人やタイ人が慣れ親しんでいるスタイルです。
反対に⻄洋的スタイルの会議では、誰でもいつでも発言が可能で、異論をはさむのはむしろ議論を活性させるために良いことである、と捉えられます。こうした違いはその国の学校教育のスタイルから起因しています。アジア人は⻄洋スタイルの会議に慣れていないので、日本人やタイ人がアメリカの会議に参加すると、気後れしてしまって発言できないと言ったことがよく起こります。
タイの組織でタイ人と日本人が一緒に仕事をする場合、どちらも東洋的スタイルですから、偉い人ばかりが話して他の人は黙って聞いているというスタイルになりがちです。本来もっとメンバーから意見を出してほしいのですが、文化的になかなかそれをすることが出来ません。そこで重要なのが「ファシリテーション(進行)」です。
一般に、会議には「20:80の法則」と呼ばれる、「2割の人が8割の会話を支配する」という法則があります。このように会議で発言する人はだいたい毎回同じになる傾向がありますが、メンバーの成⻑や関与(エンゲージメント)の観点から、それはあまり良いことではありません。ファシリテーター(進行役)は、発言の機会をなるべく均等にすることが重要な仕事となります。
意見やアイデアを求めるような場面では、自主的な挙手を待っていても出てきません。また、いきなり「●●さんはどう思いますか?」と発言を促すのもあまり効果的ではありません。そういう場合は「全員均等にコメントをしてもらう」というスタイルをとることが有効です。事前に「このトピックについて、一人一つずつコメントをお願いする予定です」とアナウンスしておいて、均等に意見をシェアする、といった方法や、その場で白紙を配って3分で全員に書かせ、それを1人1分で シェアするといった進行手法も発言の量を分散させる有効な手法です。
また、効果的な会議は「ゴール」と「アジェンダ」、そして「時間配分」が明確です。ファシリテーターは、会議の開始時に、かならずホワイトボードの端に「達成したいゴール」と、それに対する「アジェンダ」を書きましょう。 そして、「終了予定時間」も書きます。それを見ながら議論を進めて行くことによって、特定のトピックに時間を使いすぎたり、話題が大きくそれてしまうことを避けることが出来ます。こうした基本的なことは誰もが知っていることですが、ほとんどの場合は実際に行われていません。
さらには定例会議であれば「フォーマット化」してしまうことをお勧めします。例えば1時間の月例会議であれば、今月の振り返り(20分)、好事例の共有(10分)、相談・議論(20分)、連絡事項(10分)、といった形で目安の時間配分を決めてしまいます。なるべく同じフォーマットにすることで議論の漏れを防ぐことができますし、また、フォーマットを固めておくことで、「○○さんがいないと会議ができない」という上司依存の状態から「みんなでアジェンダに従って進めよう」という自主運営の姿勢に転換していくことが出来ます。
さらに、会議は人材育成を兼ねることもできます。お勧めする手法は、「会議の進行役を次世代のリーダーでローテーションする」ということです。会議の進行をするというのはリーダーを疑似体験するという意味で良いトレーニングになりますし、また発言者の顔ぶれが変わることは組織のコミュニケーションの流れを変えるきっかけになります。
非公式コミュニケーションで需要なのは「質」
非公式のコミュニケーション施策には様々な方法があります。社内セレモニー、クリスマスパーティー、定例食 事会・・・など社内イベントに類するものがそれにあたります。タイの組織ではこうした活動はとても重視されていますが、効果を生んでいるかどうかは会社によってかなり差があります。ある会社さんでは、食事会を行っていたがスタッフが嫌々参加していたので、辞めてしまったと言っていました。ここで注意しておきたいのは、どういう「イベント(機会)」を用意するかということ以上に、その「やり方」が重要だということです。
例えば恋愛に例えると、「一緒に食事をする」というデートをしたからと言って必ず「相手を好きになる」とは限りません。デートで大切なのは、そこで相手とどんな会話をするか、どんな気持ちで臨むか、どんな振る舞いをするか、という我々の気持ちや姿勢に表されるその場の「コミュニケーションの質」です。
社内イベント一つを企画するにしても、イベントをやるという事実よりその「やり方」の方が大切です。「企画者の目的や想いがこもっているか?」「進行役が話してばかりいないか?」「遅れてくる人はいないか?」「パソコンを開いて場に参加していない人はいないか?」「参加者の表情は笑顔か?」「面白味のない内容になっていないか?」 など、みんなの気持ちを惹きつけるために気を付けるべきポイントはたくさんあります。
また社内イベントは業務都合で参加できない方も多いとは思いますが、本当に熱意を持って参加を呼びかければ、予定を調整して参加度を高めることは可能だと思います。せっかくのイベントなのに、パソコンを開いている人がいると、皆が白けてしまいます。「このイベントはとても大切なので、どうかパソコンを開かないで集中して参加してください」と進行役が言えるだけの本気度はあるでしょうか。イベントの欠席者が多かったり、形式的に実施するだけになっている会社は、こうしたコミュニケーションの「質」に課題があることが多いです。
また、こうしたイベントは「組織の人間関係を強化する」という狙いがありますから、「楽しい」ことはもちろん大事ですが、「互いの人となりがわかる」要素を入れられると良いでしょう。人間はお互いのことを知れば知るほど、その人に「好意」を抱きます。そして好意を持っている相手とは仕事がしやすくなります。こうした効果を、社内イベントでも狙って、普段かかわりのない社員同士がお互いの仕事や趣味、家族について知ることができる、といった内容を混ぜることが出来ると良いでしょう。社内イベントは毎回ビンゴゲーム、といったお決まりのパターンを一度 見直してみるのも、組織活性のために経営者や人事ができる一つの仕事です。
次号ではコミュニケーションを「言語」という側面からも見ていきます。
チームビルディング ワークショップ
組織の活性化、メンバー間のコミュニケーションの活性化を目的とし、「組織のメンバーがビジョンを共有して一丸となって動けるようにしたい」「メンバー同士のコミュニケーションをより良くしたい」「部門間の壁をなくし、部門同士で連携していける体制を作りたい」などクライアントの希望に合わせカスタマイズしたチームビルディングワークショップを提供しています。
半日から一日をかけてメンバー同士の相互理解を通じ、一体感を醸成していきます。
AI College(公開講座)のご案内
自分の人生の軸を見つける
「IDENTITY LEADERSHIP WORKSHOP (IDL)」
アイデンティティ・リーダーシップ・ワークショップ
12月14日(木)-16日(土)
*日本語&タイ語
3日間、深く自分と向き合い、自分自身のリーダーとしての在り方を明確にしていく内省型のワークショップ。経営者、マネジャーなど強いリーダーシップを必要とするポジションの方にお勧めのプログラムです。毎年、多くの参加者から「一生忘れられない経験になった」とお声を頂きます。今回は、日本から数万人以上の管理職研修のご経験を持つ(株)ザイン社の鶴田社⻑をお招きして実施致します。
一年に一度の貴重な機会となりますので、是非参加をご検討ください。
日時: 12月14日(木)・15日(金)・16日(土)9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 28、000THB (VAT別)
【無料セミナー】スタッフの成⻑支援を促す
能力アセスメントの考え方と実践事例
ID MAP Seminar:
スタッフの成⻑支援を促す能力アセスメントの考え方と実践事例
11月9日
*日本語&タイ語
スタッフを採用、育成、配置する上で能力アセスメントは必要不可欠なものとなりつつあります。しかし多くの場合、性格やパーソナリティーの評価に終始してしまい、組織開発や人材開発に有効に活用できているか疑問が残ります。本セミナーにて紹介するID MAPはそれぞれの人材が持つコンピテンシー(成果につながる行動)を明らかにし、コンピテンシーを通した適切な人材の採用、配置はもちろんより最適な人材育成のPDCAを構築するうえで必要な考え方を明らかにします。
日時: 11月9日(木)10.00-12.30(タイ語) 14.00-16.30(日本語)
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 無料
HR College人事の学校 〜評価・報酬編〜
HR College Module B: 評価・報酬編
12月1日・2日
*日本語&タイ語
人事制度を体系的に学べるセミナーの評価・報酬編、2日間コースです。人事制度とは何か、という点から等級、評価 制度の設計、運用方法、報酬制度の設計方法などを主なトピックとし日本から人事のプロフェッショナルをお招きして知見・経験を元にセッションを実施します。
日本人管理者とタイ人HRと一緒に学んでいただけるよう、2言語での運営となっています。
日時: 12月1日(金)2日(土)9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 12,000THB (VAT別)