AI NEWSLETTER Vol.47
MAY , 2021
AIニュースレター、47号です。
今日は「アジャイル」という概念を取り上げてみたいと思います。アジャイルはソフトウェア開発において流通している概念ですが、昨今、必ずしもIT系のプロジェクトだけでなくとも、すべての組織において活用の可能性がある概念ではないかと思っています。
「あなたの組織はアジャイル(機敏)な組織ですか?」
アジャイルとは?
アジャイル(Agile)とは、直訳すると「素早い」「機敏な」という意味です。アジャイル開発は、システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていきます。
「速い」という意味の英語表現はいくつか思いつきますが、微妙にニュアンスが違います。Speedy やRapid などが速度そのものを指すのに対して、Agile は機敏さ、素早さといったニュアンスです。これを一般的な組織に当てはめると、「いかに変化をとらえて、臨機応変に、短時間で行動を変えられるか」という表現になるでしょうか。
なぜアジャイルなのか?
なぜアジャイルなのか。それは皆さんもご認識の通り、今はとにかく環境変化が目まぐるしいからです。
発生から1年経ってもコロナは終息しませんでした。また、ロックダウンが終わったかと思えば、また次の感染の波が来て行動制限がかかってしまいます。こういう環境の中では、半年後、いや3か月後の予測すら役に立たないかもしれません。
そんな中で今、それぞれの企業が意識するべきことは何でしょうか。
まずは、「複数のシナリオを想定し備える」ことだと考えます。コロナが終息しても、終息しなくても慌てないように、両方のパターンに備えた計画を立てることです。どちらに転んでも備えができていると思えば安心して仕事ができますし、仮に思ったよりも早く終息したらそれはそれでラッキーです。
シナリオを想定した上で、「色々なことを試してみる」。
新事業を始める、新しい商品を開発する、組織のDXを推進する、色々なことを今は「試してみる」ときです。試してみたことが間違っていたり、やるべきでなかったと気づくこともあるかもしれません。その時は朝令暮改を恐れず、変更を加えたりストップするのです。
そうした、試行錯誤を機敏に回していくことで、組織として経験値を重ねて学習をしながら、不安定な状況の中でも成功に近づくことができます。
しかしそれを実践するためには、これまでと同じような指揮命令系統で行うと失敗してしまう可能性があります。なぜならば今は、「平時」ではなく「戦時」だからです。
まるで戦争状態のように先行き不透明で変化が激しいときこそ、組織の機動力を高めておかないと時間がかかったり、余計な非効率を招いてしまいます。
組織をアジャイルにするためには?
ではアジャイルに組織を動かすためにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは3つのポイントを紹介しておきます。
1. 職能横断の小さな組織を作る
新しいことを始めるときは大きな組織でやってはだめです。アジャイル組織では組織の単位を出来る限り小さくします。例えば「DX推進のプロジェクトを始める」という例であれば、関連部門からできれば一人ずつ担当をアサインします。同じ役割の人を二人入れる必要はありません。営業から一人、開発から一人、技術から一人、といったイメージです。
また、アジャイル組織では「役割はあっても担当はない」という表現を用います。つまり、新しいことをやるわけですから、キレイに領域が切り分けられず複数領域にまたがる業務、あるいはスキマの業務が発生します。こうしたことを予め承知の上で、双方が相談しながら業務を前に進めます。
「自己組織化」(self-organization)という概念がありますが、誰かからの命令を受けた組織ではなく、自分たちが自分たちのためにミッションを遂行する組織である、という共通認識を作ってスタートすることが大切です。
2.「スクラム」と「スクラムマスター」
アジャイル開発で有名な概念が「スクラム」です。スクラムとはラグビーで肩を組んでチーム一丸となってぶつかり合うフォーメーションのことですが、すり合わせが必要な時は、すばやく全員が集まって(オンラインでも同様)、ひざを突き合わせて相談し解決します。
通常の組織であれば「次の定例会議で話そう」となると思いますが、スピード優先のアジャイル組織は、すぐ集まって、すぐ話し、すぐ解を出します。上司を巻き込む必要があればその場ですぐに連絡して判断を仰ぐなどします。
その際に重要なのが「スクラムマスター」の存在です。スクラムマスターはスクラムの推進役で、意見を引き出したりまとめたりする役割を担います。職務横断で権限が不明確認なりがちだからこそ、ともすると議論が停滞しがちです。誰が交通整理をするのかを明確にしておく意味でスクラムマスターの役割は重要です。
3. 勇気を持ったフィードバック
アジャイル組織では、「勇気を持ったフィードバック」が大事だと言われています。決めたことが間違っていたらすぐに修正する必要がありますが、それを誰かが遠慮なく言い出さなくてはいけません。そこにおいては、冒頭にも書いた「朝令暮改はむしろウェルカム」という文化を根付かせていないとなかなか難しいです。
また、組織内の見えない力関係や人間関係があると、こうした遠慮のないフィードバックを阻害します。だからこそ、「この組織では、勇気を持ったフィードバックこそ大歓迎」というグラウンドルール(チームで大切にする約束事)を先に明示しておくことが大事でしょう。
以上、今日はアジャイル組織について紹介してきました。もともとはIT業界の用語なので、なじみの薄い方も多いかもしれません。しかし今はすべての業界がデジタルになってきており、ましてや今の環境下ですと、すべての業界がアジャイルに生まれ変わる必要があるのではないか、そう感じています。
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