AI NEWSLETTER Vol.12
MARCH , 2018
リーダーシップとオープンマインドで組織を変える
「アジア式組織運営」を考える
今回は、タイの組織力向上に共に奮闘する日本人HRとタイ人HRの方にAsian Identityが取材。ポッキー・コロンなど のお菓子、アイスクリームの製造・販売でおなじみのタイグリコの日本人人事の南賀さん、タイ人人事のオンシューマさんのお二方にお話を伺いました。(以下、敬称略)
南賀: 1989年にグリコに入社をし、営業、マーケティング、PR→広報、Corporate planning→経営企画、そして 人事を経験し2015年からタイに赴任しました。タイでは人事・総務・経営企画等を見ています。現在は、人、組織の成⻑やグリコの企業理念の浸透に関わり、即断即決で物事をダイナミックに進めていける点にやり甲斐を感じています。
オンシューマ: タイグリコの人事部門で働いて12年強です。元々は、台湾系企業で人事総務の仕事を2年経験し、こちらの企業が閉鎖となったのでグリコに入社をしました。スタッフクラスからスタートし、今は人事部門でHRMとHRDの2チーム双方を管理しています。HRMでは採用や就業規則の整備、福利厚生制度の管理を行っており、HRDでは社員のトレーニング、昇進昇格、昇進昇格試験の運用、フォローアップを行っています。今の仕事で一番好きなのは人や組織が良い方向に変化していく過程に携われることです。
日本人・タイ人間のコミュニケーション問題に取り組む
南賀: 2015年にタイに赴任した際、前任者の赴任期間中にタイグリコの人事制度改革や研修計画の変更、昇進昇 格試験の導入など、かなり大きな変更を行っていました。実際に自分が赴任した年から変更後の制度のオペレーショ ンが始まるタイミングで、走りながら考える、初めてのことに対応する、オペレーションを回すことで精いっぱいで した。
オンシューマ: 新しいことは好きですが、当時は大変でした。また、研修制度を変えるタイミングですぐにやるべ きだと思ったのは日本人とタイ人間のコミュニケーションの改善です。組織を活性化させるためには意見を言いやす い風土を作る必要があると思いました。
南賀: 日系企業だから日本式の組織運営に合わせるとか、もしくはタイ式組織運営に合わせるのか、どちらか一方に合わせる必要はないと思っていました。お互いが納得のいくようなフラットな組織運営にしたいという気持ちが強く、オンシューマとはこの件でかなり話しました。
その後、日本人とタイ人の間で異文化コミュニケーションの問題を議論する研修をする機会があったのですが、僕がタイ人参加者の前で日本人代表という形で出て、日本人の考えや行動の背景を説明したり、質問を受け付けたりしましたね。
オンシューマ: 異文化コミュニケーション研修の実施後は、変化がみられました。日本人がなぜ、そのような行動や言動をとるのかという背景を理解するとタイ人が積極的に日本人に話かけるようになりました。それまでは日本人に対して話しかけることを遠慮しており、指示を待っているだけでしたが。私自身も南賀さんにもっと話しかけたいと感じるようになったんです。話かけたら、積極的に新しいことを教えてくれる。学べる、と思えるようになりました。
南賀: 私自身もタイ人の考え方を理解した上で変えたことがあります。例えば、タイ人の部下から企画書の提出があったときに、結論に至るまでの筋書きのロジックが不明確なことがあったとします。その際に日本人の多くは、筋が通ってない、ここがダメだと細かいことをダメ出しするか、論理的でないと一蹴してしまうことがあると思います。
オンシューマ: そういうときはせっかく企画書を出したのに、日本人はただダメ出しするだけ、という気持ちで話しかけづらくなると感じていました。
南賀: そこから、いったんタイ人部下の企画してきた内容を受け止めて、承認してから「ここからOJTね」と付け加えて、「もしこの件についてこのような結論を導きたいなら、こういった風にかけば伝わりやすい」とどのような結論の導き方を企画書にどのように書くべきかを教えるようにしました。
オンシューマ: そのようにしてもらえると、認めてもらえたうえで新しい方法をどんどん教えてもらえると感じるようになりました。だから話しかけることを躊躇しなくなりました。
寧ろ、学べるので話しかけたいと思うようになりました。
南賀: Googleが提唱する「心理的安全性(Psychological Safety)」だと思うんです。生産性の高いチームは心理的安全性が担保されているというものです。他者の反応に怯えたり羞恥心を感じることなく、自然体の自分を曝け出すことのできる環境や雰囲気を如何に作れるか、それを意識して行動、チーム運営するようになりました。
心理的安全性にもつながることですが、やはり上司に話かけるのを躊躇してしまうタイ人の性格を考え、Glicoコアバリューを活かした私の個人的な目標設定でOpen mindの項目に、一日15分、各メンバーとフ リートークの時間を設けると書きました。その15分は何を話してもいい、何を話しても怒らない、何でも話そうということで時間を設けたところ、本当に話かけに来てくれたんです。あるタイ人はその目標を私が宣言してすぐ「税金の計算ミスをしました」と持ってきました。怒れなかったですね。(笑)
GLICOコアバリューの浸透と組織変革への思い
南賀: 環境変化が激しい中で、Job Descriptionに乗ってないこともリーダーシップとオープンマインドを発揮してやってほしい、そんな期待からマネージャー研修も本格的に導入しました。一人だけがリーダーで周囲を率いるという形ではなく、全員がリーダーシップを持つ こと。ぶれない軸を持ってほしい。そんな思いがありました。タイの組織運営は、目上の人を敬い、上の方が決めたことに従って行動するというヒエラルキー型が多いと思います。そこをあえてタイグリコで はフラットな組織運営を目指し、若い人でもどんどん意見を出すような風土にしたいという思いを持ちました。Glicoコアバリューの中にもLeadershipがあります。人事評価制度にもこのバリューを反映させるような仕組みにしています。
タイと日本の人材育成に関する考え方の違い
オンシューマ: 正直、日本人とタイ人の考え方は異なりますが、なぜそういう風に考えるのかという考えの背景を知る努力は必要だと思います。また、Glicoコアバリューを軸として意思決定ができる、なにか同じ方向性を見るための共通した判断基準=軸があるということはとても大切だと思います。
南賀: 育成という点では、タイ人はスキルセット(どんなスキルが身につくか)日本人はマインドセット中心(どんな考え方が重要か)で研修を重視する傾向があると思います。受講者側が研修に期待することも同じかと思います。企画する側は、タイ人はよりHow toに近いものを求めているということを前提として、うまくマインドセットも織り込むということを認識する必要があると思います。
HRにとって必要なこと
オンシューマ:組織を変えるためのリーダーシップです。以前であれば人事は総務・雑務のような仕事でオペレーション中心、受け身の仕事だと思われていたと思います。しかしながら、今の世界は変わってきており戦略的に組織に良い変化をもたらす役割を発揮する必要があると感じています。
南賀: 人事に必要なことは常にオープンマインドで、こうあるべき、という考えを持ちすぎないこと。人はそれぞれ違うので柔軟性とバランス感覚を持つことが大事だと考えます。一人ひとりとの対話、それを上手く纏めていくそんな力が必要だと思います。
AI: リーダーシップとオープンマインド、いずれもGlicoコアバリューにたどり着きますね。お二人のチームワークの良さとコラボレーションを実感することが出来るインタビューでした。ありがとうございました。
読者からの相談コーナー
Asian Identity の 人材コンサルタ ントがマネジメントを担う方へのおス スメの本はありますか? (No.3)
DRiVE
by Daniel H. Pink
日本では、モチベーション3.0という本で発売されています。 マネージャーの重要な仕事のひとつと して「部下のモチベーションをいかに引き出し、モチベーション高く仕事をしてもらうか」ということが挙げられると思います。また、弊社でも取り扱いの多い研修テーマです。
モチベーション3.0というのは自分自身の内側から出てくるやる気を指し、報酬アップなどの外発的モチベーショ ンアップ施策とは異なるものです。これからの働くを考えたときに従業員のモチベーション3.0をいかに引き出し (=内発的動機付け)組織やチームを活性化させるのか、という点は人事パーソンやマネジメントを担う方にとって必要不可欠なテーマだと考えられ、んでおくべき一冊かと思います。
AI college 3月・5月開講予定講座のご案内
顧客価値創造(カスタマーバリュー)講座
3月23日(水)1日間講座・THB 3,500
営業、マーケティングを担当しているタイ人の方にお勧めの講座です。
顧客のニーズ、潜在ニーズを正しく理解し、いかに自社製品・サービスの魅力を伝えるか、また関係性を如何に持続させるかその方法論を体系立てて学べる講座となっています。自社製品やサービスは理解できても、巧く伝えることができない、顧客のタイプに応じたコミュニケーションの仕方が分からない、などの悩みへの解決のヒントを得ることができます。
HR COLLEGE (人事の学校) 評価・報酬編
5月11日・12日(金・土 )2日間連続講座 THB12,000 (日本語&タイ語)
人事制度を体系的に学べるセミナーの評価・報酬編、2日間コースです。人事制度とは何か、という点から等級、評価制度の設計、運用方法、報酬制度の設計方法などを主なトピックとし日本から人事のプロフェッショナルをお招きして知見・経験を元にセッションを実施します。
日本人管理者とタイ人HRと一緒に学んでいただけるよう、2言語での運営となっています。
日時: 5月11日・12日(金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 12,000THB (VAT別)
自分の人生の軸を見つける・IDENTITY LEADERSHIP WORKSHOP (IDL)
5月17日・18日・19日(木・金・土 )
3日間連続講座 THB28,000 (日本語&タイ語)
3日間、深く自分と向き合い、自分自身のリーダーとしての在り方を明確にしていく内省型のワークショップ。経営者、マネジャーなど強いリーダーシップを必要とするポジションの方にお勧めのプログラムです。毎年、多くの参加者から「一生忘れられない経験になった」とお声を頂きます。
一年に一度の貴重な機会となりますので、是非参加をご検討ください。
日時: 5月17-19日(木・金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 28、000THB (VAT別)