AI NEWSLETTER Vol.46
MAR , 2021
AIニュースレター、46号です。
この時期、人事評価ついての相談が多く弊社に舞い込みます。今年はコロナの影響もあり、厳しい評価をせざるを得ない会社も多いでしょう。必然、昇給率やボーナスも前年を下回る計画をする会社が多く、従業員のモチベーションに与える影響も大いに心配になるところです。
一方で、昇給やボーナスはモチベーション大きな要因ですが、人間のモチベーションはもう少し複雑なもので、それをどのように伝えるかによっても結果は大きく変わってきます。本稿ではモチベーションについて掘り下げてみます。
「ボーナスでモチベーションは高まるか?~外発的動機と内発的動機」
「外発的動機付け」と「内発的動機付け」
そもそもモチベーションには2種類あります。これは一般的によく知られていると思います。
外発的動機付け (Extrinsic Motivation)は、報酬を得たり罰を逃れたりするためのモチベーションを指します。何かを獲得するために行為を行う種類のモチベーションを指します。ボーナスやインセンティブは、外発的動機付けを刺激するものとされています。
一方、内発的動機付け (Intrinsic Motivation)は、行為そのものを報酬と捉えて行動することを指します。
お小遣いをもらえるから掃除をするのではなく、部屋をきれいにすること自体が気持ち良いから、人は掃除をするものです。怒られたくないから勉強するのではなく、勉強そのものが面白いというのも勉強する理由です。
そうした、外からの刺激ではなく内側から湧き出るモチベーションを指します。褒められる、賞賛される、なども内発的動機付けに含まれるので、上司のコミュニケーションは内発的動機付けの醸成に大きく関ります。仕事ぶりを認めてあげる、長所をフィードバックしてあげる、仕事の意味や目的を語る、と言うことが出来る上司の元で働く部下はモチベーションを感じやすいと言えるでしょう。
こうしたことは、誰もが直感的に理解していると思いますが、我々は日常生活の中で、モチベーションの取り扱いをしばしば間違えます。
Over-Justification(過剰正当化効果)
既に相手が内発的動機付けを感じているのに、外発的動機付けを与えることで、意に反してモチベーションを損ねてしまうということが知られています。
例えばある実験では、生徒たちがすでにゲームを楽しんでいるのに、ゲームの勝者にご褒美を上げたら興味が減ってしまったという結果が示されました。これは、報酬を与えることで、「遊び」を「仕事」と感じるようになってしまうからであるというのがその理由です。
決して、外発的動機付けが有効でないと言っているわけではありません。外発的動機付けは「相手が興味を示していない仕事、楽しく思っていないタスク」に対して用いることで、より効果が得られやすいということです。相手がそれをすでに楽しんでいるのであれば、お金やご褒美は必要ないかもしれません。
報酬を与える場合はタスクの難易度と比例させる
また、簡単な仕事に対して報酬をもらっても、人間の内発的動機はたいして高まりません。
子供が簡単なテストで満点を取ったからといって、豪華なプレゼントを上げるのは効果的ではありません。それが喜びに繋がらないばかりか、次のタスクに向かうモチベーションにも影響してしまいます。
豪華な報酬は、難易度が高いタスクを達成した時にこそもらって嬉しいものです。難易度の高い試験、年間の予算達成など、より大きな目標を達成したときは、躊躇なく豪華な報酬を与えましょう。それは狙い通りのモチベーションに繋がることでしょう。
外発的動機付けは長期的な効果を持ちづらい
社員からの給与交渉に頭を悩ませる経営者は多いです。多くの場合、「去年あんなに上げてあげたのに、今年になったらもっと欲しがる。どこまで昇給してもきりがない」ということを感じる経営者が多いようです。
外発的動機付けは、有効期間が短いことが知られています。例えば、昇給はしたときは嬉しいですが、2,3か月もしたら忘れてしまいます。1年前の昇給にずっと感謝してくれる部下は心理学的には稀であると言えます。ポジションを与えたり、特権を与えたりするのも同じです。頑張って報酬を与えた側はずっと覚えていますが、もらった側にとっては既得権になってしまうのです。
逆に、内発動機付けは長期的な効果を持ちます。上司や同僚からもらった感謝の言葉はずっと心に残ります。仕事に裁量権を持って進められることによるやりがい、は少々のお金をもらう以上にパワーを持ち長期的なモチベーションを支えます。上司であれば、そうしたことも理解しながら外発的動機付けに頼りすぎないことが重要です。
予期しない形での外的報酬は内発的動機に繋がりやすい
賞金やボーナスなどは、「もらえることが分かっている」という状態だと効果は十分に望めません。逆に、「予想外」の報酬はモチベーションに繋がりやすいとされています。
「もらえるとは思っていなかったけど、もらえた」のと「もらえるとわかっていて、もらえた」のでは、前者の方がパワフルなのです。あらかじめもらえることを想定していると、報酬をもらうことへの感情の動きは弱まってしまうからなのかもしれません。
こう考えると「表彰」というのはモチベーション的にとても理にかなっています。予定調和的に報酬をもらうのではなく、自分が選ばれたことを発表され、賞賛され、そして驚きと共に報酬を受け取ることで、感動が増す。サプライズプレゼントなどとも似たメカニズムかもしれません。また、すでに内発的動機が高まっていますから、そこに高額な賞金などはむしろ不要であることも多いです。
以上、今日は動機付けに関して、私たちが意識したほうが良いことについて考えてみました。
人間の気持ちはかくも複雑に出来ています。同じ報酬原資を使う場合でも、どういう名目や意味付けで渡すか、事前の演出をどうするか、などで人のモチベーションに与える影響はきっと大きく変わることでしょう。
今回のニュースレターはこれで終わりです。お読みいただき有難うございました!弊社が提供するリーダーシップやマネジメントの講座を通じてこうしたテクニックを学んでいただけます。ご興味ある方は、ぜひイベント一覧をご覧いただくか、Asian Identityチームまでお問い合わせください。
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