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AI NEWSLETTER Vol.15
JUNE , 2018
私たちが異文化をテーマとした研修を行う中で、国と国の文化背景および物事のとらえ方の違いについて触れることの他に、世代の違いに如何に向き合うかをテーマとした内容の質問、相談を頂くことがあります。タイ人のマネージャーが、タイ人の若手社員の考えを理解できず、どのように関わっていいか悩んでいる。例えば、このようなご相談です。世代の異なる人たち、つまり若手のマネジメントという点について今回お話してみたいと思います。
異なる世代をどうマネジメントするか
ミレニアル世代
ミレニアル世代または、Y世代、Z世代などという言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。これらの言葉は全て1980年から2000年代生まれの新しい価値観を持つ世代を示す言葉です。生まれた年で、これよりさらに細かく分類できるのですが、およそで捉えて頂ければと思います。年齢でいうと20代から30代半ばまでの世代を指し、物心がついたときにはインターネットが普及し、スマートフォンなどをはじめとしたデジタル機器の恩恵を受け、欲しい情報を瞬時に得られる環境やオンラインショッピングなどが続々と整備される中で育った世代です。またSNSなどを通じて仲間とつながること、共感を得ることに重きを置く一方で共同体(コミュニティ)への参画意識に乏しいと言われます。こうした現象は、日本でも、タイを含む東南アジアでも同様にみられるといわれます。
2020年には、このミレニアル世代が世界の労働力の3分の1を占めるとされており、この世代が「働く」ということに対し、どのような考え方や価値観を持っているのかを知ることは、今後の企業の組織人事戦略を描くうえでは不可欠です。
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個人と組織の結びつき方を見直すということ
ミレニアル世代の働くモチベーションは「その会社で働く意味」を見出せるかどうか、が特に重要だと言われています。金銭報酬や地位報酬といった給与、ポジションというもののほかに、仕事のやりがいや仕事を通じて自己成⻑で きるか否かという点が重要であり、それは個人ごとで異なる、という点がこれまでと大きく違います。つまり、企業が個人個人にそこで働く意味ややりがいを創出できているのか、その価値を提供できているのかいうところを見ていく必要があります。従業員の自己実現に企業のアセットが如何に貢献しうるか、という視点を持ち制度作りなどをしていく、そういった姿勢が企業側や人事に求められているという現状があります。
最近、デロイトトーマツが行った「The Deloitte Millennial Survey 2018」という調査によると、世界のミレニアル世代の勤務先への帰属意識が一層低下したという結果が出ました。また、2年以内の短期での離職を考える割合が43%、一方で5年以上の⻑期勤続を見込む割合は28%と昨年の調査と比較し、短期での離職を考える割合が増加したそうです。そして、従来から⻑期就業が価値観として当たり前とされてきた日本においては、2年以内の短期離職を見込む割合(37%)が5年以上の⻑期勤続を見込む割合(30%)を上回る結果となり、1社での就業期間に対しての価値観が大きく変わりつつあることを示す結果となりました。
このように、ミレニアル世代の定着は、世界共通の課題であるということは間違いないでしょう。この世代の圧倒的多数が、継続的なスキル開発を未来のキャリアにおける重要な要素とみなしています。つまり雇用可能性の維持のために自分のスキルを高めていくことを重要視しており、そこに時間やお金を投資する傾向にあると言えます。一社の中での雇用の安定ではなく、労働市場において雇用されうる可能性の維持に努め、自己研鑽に励むという志向が見えます。
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見てきた景色の違いを理解し、若い世代と関わる
こうしたミレニアル世代の現場レベルでのマネジメントには多くの企業のマネージャーが悩んでいるようです。先日とある企業のマネージャー研修でタイ人マネージャーから若手のマネジメントにおける悩みをいくつか聞く機会がありました。悩みの多くは彼らとのコミュニケーションに関するものが多いです。「自分で考えることをあまりせず、指示を細かく出さないとその通りに動いてくれない」「自 分に自信がある一方で、自分の考え方に固執する傾向があり、上司からのアドバイスを受け入れてもらえない」「自ら能動的に上司にコミュニケーションを取ろうとしてこない」といったお悩みです。
こういった悩みについては「自分の世代がもつ価値観でものを見て「彼らはダメだ」と言っていては問題は解決されません。育った時代が異なるのだから、見てきた景色が違う、という理解を前提に彼ら若い世代と関わっていく、ということにしか解はありません。
例えば、分からないことがあれば人に聞いたり、図書館に足を運んで本を選んで情報を得た時代とは違い、ネット検索で容易に答えが手に入る時代の中にいれば、人との関わり方や考える時間、質が違ってくるのも当然です。そうした前 提の違いから、年⻑世代からは「自分で考えていない」ようにも見えます。そうした「考える」ことの認識の違いがあるのであれば、なぜ考えることが重要なのかのすり合わせから始めていく必要があります。
また、「自分の考えに固執する」ように一見見えるのも若者の特徴ですが、一方でミレニアル世代は既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想、多様性を受け入れる力を持つと言われています。彼らのそういった志向をうまく生かしながら、これまで考えられることのなかった新たな価値の創造をする姿勢が上司には求められます。そして、先ほど述べたように「その会社で働く意味を求める」ミレニアル世代に、その意味をコミュニケーションするのは上司の仕事です。自分の部下がなぜこの会社で働いているのか、この仕事を通じてどう成⻑していきたいのか、という点についてよく理解したうえで、部下に必要な経験を積んでもらい、必要な成⻑に向け都度フィードバックを行っていくという、部下個人のキャリアや仕事観に焦点を当てた育成が求められています。
手がかかる、と感じるかもしれませんが、やれ、といっただけではやらない。なぜやる必要があるのか、それを行うことでどんな価値に結びついているのか、そう細かくコミュニケーションしていく必要があります。「ここで何が得られるのか」それを若手に強く伝えていくのです。そして、行動や結果についてフィードバックし、承認する。あなたは価値がある、そう承認してあげることで彼らはさらに自分や組織の成⻑にコミットするはずです。
組織に従属する個人ではなく、組織と個人の関係性がフラットになりつつある時代、企業がどのような働き甲斐やキャリアを個人に提供できるかという視点が重要です。組織と個人が良好な関係を築くこと、個人と組織がお互いの成⻑にコミットする、という結びつきが当たり前とされる時代になると思います。どうか「自分たちの頃はこうだった」「自分たちはこうやって育てられた」と言いたくなる言葉を飲み込んで、部下に向き合っていきましょう。
読者からの相談コーナー
Asian Identity の 人材コンサルタン トがマネジメントを担う方へのおスス メの本はありますか? (No.6)
HBR’s 10 Must Reads on Emotional Intelligence
by Harvard Business Review
Emotional Intelligenceとは心の知能指数を指し、EQと略して表現されます。このEmotional Intelligence の領域の専門家によって書かれた記事をハーバードビジネスレビューが厳選して取り 纏めた本です。
組織を率いるリーダーで自身と組織のパフォーマンスを最大化できている人物はこのEQ、という指数が高いということが研究によって明らかにされています。具体的には、自己や他人の感情を知覚し自分の感情をコントロールできる指数を表します。自己認知力、感情をコントロールする力、他人への共感性、自身のモチベーション管理、社会性(ネットワークを築く力) などの能力で構成されています。これらの能力は同僚をはじめとした他者からの適切なフィードバックや練習で向上させることが可能です。記事の中にはチーム内のメンバーの感情を起点とした衝突を如何にコントロールするか、困難な状況に対応する精神力の養い方などもテーマとして取り扱われています。リーダーとして成⻑したい方に是非読んで頂きたい1冊です。
AI college 8月・9月開講予定講座のご案内
顧客価値創造(カスタマーバリュー)講座
8月2日(木)1日間講座・THB 4,500
営業、マーケティングを担当しているタイ人の方にお勧めの講座です。
顧客のニーズ、潜在ニーズを正しく理解し、いかに自社製品・サービスの魅力を伝えるか、また関係性を如何に持続させるかその方法論を体系立てて学べる講座となっています。自社製品やサービスは理解できても、巧く伝えることができない、顧客のタイプに応じたコミュニケーションの仕方が分からない、などの悩みへの解決のヒントを得ることができます。
日時: 8月2日(木 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 4,500 THB (VAT別)
HR COLLEGE (人事の学校) 採用・育成編
9月21日・22日(金・土)2日間連続講座・THB 12,000
タイにおいても、人事の仕事は従来型の事務的な仕事のイメージから大きく変化し、より戦略的な視点とスキルを持って、経営に付加価値をつけることが求められるようになっています。今回は採用および育成をテーマにタイでの採用、面接スキル向上、また社員の育成や組織開発について包括的な知識・スキルを身に着けることを目的としています。本セッションでは、日本、および東南アジアで⻑年人事・人事コンサルタントとして経験を積んだ講師が、講義とワークショップを交えて人事スキルについての解説をします。
日時: 9月21日・22日(金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 12,000 THB (VAT別)
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