AI NEWSLETTER Vol.16
JULY , 2018
今月は「セルフマネジメント力(Self-Management) 」について取り扱います。
昨今、企業におけるリーダーというのはますますストレスの大きな仕事になっています。多くのマネジャーが、業績管理と部下育成、また本社とのやり取りや自分自身のための勉強など、様々なタスクによって大きなストレスを抱えています。どうすれば我々はこうしたストレスをうまくマネージできるのでしょうか。
リーダーに必要な「セルフマネジメント力」とは?
リーダーが気を付けるべきDERAILMENT(脱線)行動
人間はストレスが溜まると、それが感情に影響を与えて表情や言動に現れます。弊社では、そうしたネガティブな言動をDerailment(脱線)行動として、6つに定義しています。
1.Insensitivity(不感知)=相手の気持ちを汲み取れず、自分の思い込みで行動してしまう。
2.Defensiveness(自衛論争)=自身の過ちや弱みを隠すために、反論、主張する。
3.Impulsiveness(衝動)=感情のコントロールができず、配慮ある行動ができない。
4.Dependence (依存)=決断を他者に委ね、自身で意思決定ができない。
5.Indifference(放任・無関心)=進捗や結果をフォローせず、仕事を丸投げする。
6.Avoidance(回避)=リスクやトラブルから逃げ、責任を取ることを避ける。
こうした行動は人間だれしも取ってしまうことはあるものですが、人に影響を与える立場のリーダーにこうした行動が目立つようになると、部下や周囲に悪影響を与えてしまいます。ゆえに、こうした脱線行動は修正される必要があります
このような行動が顕在化している場合には周囲からの適切なフィードバックが必要ですが、通常は周囲が関係の悪化を恐れてなかなかフィードバックができません。そこで、無意識の行動を可視化するアセスメントツールを用いたり、また匿名でフィードバックをもらう360度アンケートなどを実施することが重要です。
リーダー自身のメタ認知能力を鍛える
一方で、そうした外部刺激に頼るだけでなく、自分で自分のマイナス感情をマネージできることは、リーダーにとって必須能力であると言えます。日々起こる様々なことにいちいち反応していたのではストレスで自分のメンタルが持たないからです。そこで大切になるのが「Meta-Recognition(メタ認知)」能力だと言われています。
メタ認知とは自分の感情を客観的に見ることです。例えば自分がイライラしているとして、「あ、私は今イライラしているな」と気付ける能力のことです。人は、自分の情に気づくことができれば、その感情に流されることなくマネージすることが可能になります。
自分をメタ認知する方法として有効なのが、頭の中で自分自身の様子を遠くから眺めてみる、という行為です。これを「自己距離化」といいます。例えばある人と言い争いをして腹が立ったとします。その様子を自分は部屋の外から眺めている、という想像をするのです。そうすると状況を客観視でき、おのずと怒りが静まってきます。
腹が立っているときというのは、どうしても「自分は正しい」「相手が間違っている」というバイアスに囚われてしまっています。でも実際は少なくとも互いに言い分があって、どちらが100%間違っているということは多くありま せん。「自己距離化」によって両方の主張を冷静に眺めることで感情をコントロールでき、またその結果として冷静な対応ができます。
自己距離化でさらに効果的なのは、怒ったことや感じたことを紙に書きだすことです。書くという行為は、客観的に状況を見ることを必要とします。許せない、腹が立つ、という感情も書き出すことで、そういう自分を眺めていることになるのでメタ認知ができ、ネガティブな言動のコント ロールに役立ちます。
「MINDFULNESS」と「MIND WANDERING」
マインドフルネスという言葉が最近流行しています。座禅や瞑想などを通じて、雑念を取り払い心の乱れを整える行為のことを指します。スティーブ・ジョブズが京都に通って禅を習っていたという話は有名ですが、様々な企業のリーダーがこのマインドフルネスを実践しています。
マインドフルネスの逆の状態を「マインド・ワンダリング(Mind Wandering)」といいます。これ は、集中しようとしても、つい頭の中であれこれ考えてしまっている状況です。過去の失敗や人間関係上の問題が、忘れようと思っても何度も頭に浮かんできてしまう状態を経験したことはないでしょうか。こうした状態が続くとストレスが溜まっていき、ひどくなると鬱病になってしまいます。
集中力、判断力を必要とするリーダーには、こうした雑念を取り払うためのトレーニングが必要です。具体的には瞑想や座禅などを通じて、短い時間でもよいから集中する練習を繰り返すことです。こうしたことは脳を休めることにつながり、ストレスがだんだん軽くなってきます。
さらに効果が実証されているのは、瞑想しながら「誰かの幸せを願う」ことだそうです。腹を立てているときはどうしても自分本位の感情になっています。そうではなく、家族でも同僚でも、頭に浮かんだ人の幸せを願ってみる。そうすることで、自分自身の心も満たされていきます。人間は他人の幸福を喜ぶようにできている動物なのです。
最後に、スマートフォンやパソコンがセルフマネージメントに与える影響も気を付けたいところです。こうした機器を使用しているとき、我々の表情は硬直しています。表情が硬いと、脳が勝手に「自分はストレスを感じている」と判断してしまうのだそうです。よく「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」といいますが、人間の心は身体の状況から大きく影響を受けます。特にスマホを使っているときは、姿勢も悪く、呼吸も浅くなり、ストレスを増幅させるそうです。
一方で、顔を見て直接話す際は、人間は必ず豊かに表情を作りながら話します。こうしたことからも、人間同士が会って直接話すことの重要さがわかります。どれだけテクノロジーが発達しても、直接人間が会って話すことの重要度が下がらないのは、そんなところにもあるのかもしれません。
読者からの相談コーナー
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