AI NEWSLETTER Vol.33
FEBRUARY , 2020
ニュースレター33号です。今回のテーマは「変化に強い組織」です。
~変化に強い組織とは?~
世界的な景気後退がささやかれる中、タイの2020年も先行き不透明な状態となっています。こうした時期に、我々リーダーが考えるべきこととは何でしょうか。
無駄なコストを削減し財務体質を筋肉質にすることや、不採算事業から収益事業にリソースを集中すること、などは多くの企業がまずは考えることでしょう。それに加えて、最も大切なのは「変化に強い組織」を作っておくことだと私は考えます。
人間には無意識にはたらく「正常化バイアス」というものが存在します。危機や変化が迫っていても、「まだ大丈夫だろう」と判断し、アクションを変えないという習性です。大きな震災が起きても初動が遅れて被害が大きくなってしまうのには、背後にこうしたメカニズムがあると言われています。
日系企業も今後10年で大きな構造変化が起きるのは間違いないとされている中で、「まだ当面は大丈夫だろう」と捉えて過去の行動を続けるのか、他社に先駆けていち早く変化への準備を進めるのか。それにより生き残りに向けた差がつくと言えます。2008年のリーマンショックの際も、変化の兆候をいち早く察知しアクションを取った企業が生き残っています。
かつて松下幸之助は、「好況よし。不況なおよし。」と言いました。仮に逆境が訪れたとしても、リーダーの捉え方次第で、自社の経営を見つめ直し変革するチャンスになるのです。本稿では、「変化に強い組織」を作るために必要なことを、4点にまとめてご紹介します。
1. 理念・方針を徹底する ~タテ糸を強める~
まずリーダーが考えるべきことは、「タテ糸」つまり、経営からのメッセージを強めることです。織物に縦の糸と横の糸があるように、組織もタテヨコのコミュニケーションを通じて成り立っています。平時にはヨコ糸を強めて部門間交流をすることで組織全体の活性化を図ることが大事ですが、危機の際には特にタテのコミュニケーションが重要です。つまりトップの方針を明確に伝える機会を設け、会社を取り巻く状況や、必要なアクションを明確に伝えるのです。
そのためには、伝える場が必要です。弊社では「リトリート」と呼んでいますが、主にはマネージャー層を集め半日から1日の時間を設けてじっくり時間を取って、方針説明や対話を行います。一方的な説明にせず、方針を受けてどうアクションするかをマネージャー人にディスカッションしてもらい、経営陣が見ている「視界」を共有するのです。またその際に、自社の礎である「理念」に立ち返り、しっかりと再確認・共有することが必要です。理念には、自社が培ってきたDNAや“らしさ”、強みが詰まっています。環境変化だからと言って浮足立って自社らしさを変えてしまうのではなく、「守るべきもの」を明確にすることも重要なことです。
2. コア人材を育成する
昨今、多くの日系企業でタイ人材の世代交代が進んでいます。80年代~90年代前半に入社した第一世代が引退していき、また次世代への継承が今後さらに進んでいくでしょう。これらの旧世代は長年企業を支えて頂いた功労者であると同時に、変化への抵抗勢力となっているケースが散見されます。旧世代の貢献をリスペクトしながらも、これから起こる大変化に際し、こうした旧世代から新世代へのスムーズなシフトが必要です。
具体的には、これまでと異なるスキルセットを持った「次世代リーダーの育成」が必要です。これまでは「言われたことをやる」タイ人が日系企業では求められてきましたが、今後は「自らビジョンを描く力」や、「変化をマネジメント出来る力」、「機能だけでなく全体を俯瞰できる力」が必要となります。トレーニング対象は、多くの場合は30代―40代のマネジャー陣となりますが、場合によっては20代から選抜するケースも見られます。若い世代のタイ人はますます優秀になっていますから、そうした選抜育成も会社の変化を作る上では有効です。
3. 評価サイクルを短くし、フィードバックする文化を作る
こうした世代交代を実現するには、評価制度も重要なポイントになります。これまでのタイの日系企業では「年功序列」「一律昇給」の会社が比較的多かったですが、徐々にメリハリをつける制度に移行しています。
評価のメリハリも大切ですが、より大切なのは「フィードバックの文化」を作ることです。前述したタテ糸の方針を元に、「あなたはどこが足りないのか」を明確に伝える必要があります。そのためには評価の基準を見直し、会社が期待することをしっかりと埋め込んでおきましょう。そして、フィードバックはただ単に改善点を伝えれば良いのではなく、気持ちに配慮しながらもハッキリと伝えるスキルが必要ですから、経営幹部やマネージャー人がそうしたフィードバックスキルを身に着けておくことも重要です。
また、スピード感ある変化を生むためには、評価サイクルも重要です。年1回から年2回に移行したり、また評価期間を変えずともレビュー面談の回数を増やすなどしてフィードバックがなされる機会を多くすることが大切です。
4. コミュニケーション:会議を変化し組織の効率を上げる
最後に、組織において最も改善余地があるのが「会議」です。目的が不明確、話が脱線する、一方通行で活性化しない会議、など。それらが会議効率を大きく削いでおり、会議のやり方を変えるだけで組織効率は大きく変わります。とりわけ、当社が見る限りタイの会議は非常に脱線しやすく、また時間管理も苦手です。逆にそこに大きな改善余地が残っているとも言えます。
「ゴールや時間配分を決める」「最後にアクションと担当者を決める」等の会議ルールを明確に設定し、またファシリテーター(進行役)が「多くの人が発言できるよう采配する」「議論が空中戦にならないようホワイトボードにまとめる」等のスキルを持って、効率的に進行します。会議が引き締まることで、組織の無駄が減りキビキビした雰囲気が出てくるのです。
以上、「変化に強い組織」に必要な4つのポイントを短く紹介しました。2020年にタイの経済がどうなるかは私にもわかりませんが、「仮に大変化があったとしても、それに備えられる強さを身に着けよう」と捉え、社内改革を進めておくことには意味があります。冒頭の「不況なお良し」では無いですが、大切なのは、変化を恐れるのではなく、「変化に立ち向かう姿勢」なのです。
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