AI NEWSLETTER Vol.01
FEBRUARY , 2017
すれ違う? 日本人とタイ人
世界の文化の中の比較で見れ ば、日本人とタイ人は極めて近 い価値観を持っています。
私はタイで企業の人材育成や組織のコミュニケーションの問題を解決するサ ポートをしています。テーマが「人」というだけあって、クライアントから 我々のチームに寄せられる相談は非常に生々しいものが多いです。 「業務 だと嘘をついて実は遊びに行っていたタイ人を皆の前で叱ったら、あとで会 議室でタイ人に取り囲まれた。どうすればいいか」という日本人マネジャー の悩みを聞かせていただくこともあれば、「うちの日本人上司は厳しすぎ る。どうして日本人はあんなに無駄に厳しいのか?」とタイ人から相談を受 けて答えに窮したこともあります。
かくいう私もタイ人のメンバーを持つ一人の上司として、いつも自分自身のコミュニケーションは適切なのかを思い悩む日々です。自分の何でもない一言が相手の気分を害したのではないか、と考えるあまり眠れないことも数えきれないほどありました。「異文化を理解して仕事をしよう」というのは簡単です。それでもなお、タイという日本の産業にとって最も大切なこの国において、どうすれば日本人とタイ人が一緒に良い組織が作れるのかという問題は、⻑きにわたって私たちの前に横たわっています。
「同じ」だからこそ気になる「違い」
2014年にビジネススクールINSEADのエリン・メイヤーという人物が著し た「The Culture Map」という書籍が大きな話題を集めました。彼女は世 界中で行ったインタビューを通じてビジネスにおける文化の影響について8 つの尺度で明らかにしました。タイで仕事をして色々なことを思い悩むよう になった私は、その本を手に取りました。そこで私が再認識したことは、 「日本人とタイ人は、極めて似ている」という事実でした。
世界の文化の中の比較で見れば、日本人とタイ人は極めて近い価値観を持っています。例えばいずれもハイコンテキスト、つまり空気を読んで日々生活しています。また、ネガティブなフィードバックを好まずさりげなく伝えることが良しとされます。これらは我々日本人、タイ人からすれば自然なことですが、アメリカ人、オランダ人、ドイツ人、などから見れば全く逆の価値観です。
一方で少し違いも見られます。例えば「信頼」の作り方。日本人とタイ人の信頼の作り方を比較すると、日本人はどちらかというと「タスクベース」。つまり一緒に仕事をすることで、相手のしてくれた行動に対して信頼を積み重ねます。一方でタイ人は「関係ベース」。つまり食事をしたりお茶を飲んだり、人間として付き合える相手であるかどうかで信頼関係が決まります。世界との比較でみれば日本人もタイ人も「関係ベース」ですが、二者のポジションには微妙な違いがあります。この辺りはタイで仕事をしている人であれば感じる部分があるかもしれません。
いずれにしても地球規模で乱暴に言ってしまえば、日本人とタイ人は「ほとんど同じ」グループに入ります。そう考 えると、この「似ていること」に私たちはもっと感謝をすべきなのではないか、と私は思うようになりました。何十年もわたってアジアで最も友好的な関係を作ってきた日本とタイ。わずかな「違い」を尊重しながらも、「同じ」で あることをもっと大切にしていきたい、そんなことを今改めて思っています。
「...私たちは同じAsian Citizenじゃないか。」
アジアの良さを生かしたチームを作ろう
私は2012年にシンガポールで仕事を初めて、以来東南アジアを舞台に仕 じゃないか。」 事をすることに決めました。そのきっかけとなった出来事があります。
ある日系企業から「シンガポール人と日本人の関係を良くしたい」とい う相談をいただきました。その時のディスカッションの中でシンガポール人の人事部⻑がおっしゃっていた一言が私
の心に残っています。
「日本人とか、シンガポール人とかにこだわるのをやめよう。私たちは同じAsian Citizenじゃないか。」
その言葉に私は多くのことを気づかされました。私たちアジアの国々の人々は非常に多くのコンテキストを共有して います。ますます国を超えて人々が組織を作りビジネスを作ることが求められる今、「違い」に目を向けすぎずに、 同じアジア人として共通しているものに目を向けていくこと。そうした姿勢は組織運営上とても大切なことなのでは ないかと思い、以来アジアの組織づくりをライフワークとして取り組んでいます。
Asian Identityが 支援する異文化 コラボレーション
弊社では日本人・タイ人のコラボ レーションを促進するサービスを 行っています。ファシリテーター の導きの元にお互いの考えをオー プンに伝えあい、双方の立ってい る文化的背景や前提が異なること を確認します。深い相互理解を通 じて信頼関係を構築し、職場でど のようなアクションをしていくか を議論します。
公開型ワークショップのお知らせ
Asian Identityではニーズの多いテーマにフォーカスした、公開型のワークショップを開始します。企画、マネジメン ト職に必要なスキルをカバーする「マネジメント・マインドセット」「地頭力(ロジカル・シンキング)」「インサ イト・マーケティング」等の講座や、リーダーが自身のアイデンティティに向き合い、力強いビジョンを獲得する 「アイデンティティ・リーダーシップ」、また人事(HR)のスキルを包括的に学ぶ「HRカレッジ」といったメ ニューを用意しています。