AI NEWSLETTER Vol.31
DECEMBER , 2019
ニュースレター31号です。今回も人事や、リーダーの皆さん向けに役立つ社会心理学について考えてみます。
人事が知っておくべき「社会心理学」(その3)
同調圧力(ピア・プレッシャー)~なぜ人は会議で何も発言しないのか
同調圧力とは、職場の仲間(Peer)から受ける無意識の圧力(Pressure)の事です。
例えば、自分の仕事は終わっているのに何となく周りの人が気になって会社に残ってしまうとか、特に行きたくも無いのだけど、何となく仲間外れにされるのが怖くて仕方なくランチに参加するとか、そういった仲間からのプレシャーを感じて自分の行動を変えてしまう事が我々には時々あります。
組織の中でこうした同調圧力が行き過ぎると、組織のパフォーマンスを下げることがあります。
例えば、複数人のプロジェクトをやっていて、自分だけ別のアイデアを持っているとする。しかしそれを言うことでプロジェクトの方向性が変わったり、迷惑をかけてしまうのでは?と配慮して意見の表明を控えてしまう。本当はその意見があればもっと良い成果が出たかもしれないのに。
また、会議の場面で我々、特にアジアの人々は沈黙しがちですが、これも同調圧力が関係していることがあります。周囲と異なる発言をすると後から仲間外れにされるかもしれない、間違ったことを言って馬鹿だと思われたくない、といった心理が我々にブレーキを踏ませ、発言を控えるのです。
こうしたことは、欧米組織よりもアジアの組織に多い傾向です。いわゆる「集団主義」という文化的特徴を持っている国は、中国、韓国、シンガポール、ベトナム、タイなどアジア諸国に多数見られます。
こうした国々では、「身の回りの集団(代表的なものは家族)との対立を避けること」を第一に教え込まれており、周りの顔色を見ながら発言をコントロールすることが体に染みついています。
ちなみに日本も集団主義の国とよく言われますが、統計によると集団主義と個人主義のちょうど真ん中くらいであることが明らかになっています。
同調圧力にどう立ち向かうか ~価値観、行動指針の重要性
同調圧力が蔓延すると、「意見が表明されない組織」「声の大きい人の顔色を見て動く組織」「自分の頭で考えない組織」が出来上がってしまいます。これは組織のパフォーマンスをどちらかというと下げる方向に働いてしまいます。
こうした動きを食い止めるためにも、企業は「価値観」や「行動指針」と言ったものを定める必要があります。
例えば強固な組織文化を持つNexflixでは、組織の文化を明確に定めています。
“We are a Team, not a family. We are like a pro sports team, not a kid’s recreational team.”(私たちはチームであって家族ではない。子供の遊びの集団ではなく、プロスポーツ選手のような集団だ)
と定義しています。プロスポーツのチームであれば、個々の発言やパフォーマンスに責任を持ち、チームの勝利に向かって必要な言動をするでしょう。そうしたことを、経営が明確に提示することによって、無意識の同調圧力に陥ってしまう事を防いでいるわけです。
また、トヨタには有名な「トヨタウェイ」があります。『チャレンジ』(Challenge)『改善』(Kaizen)『現地現物』(Genchi-Genbutsu)『尊重』(Respect)『チームワーク』(Teamwork)という5つのキーワードで構成されています。
こうした価値観を、決してお題目に留めることなく、日々、経営者や上司が部下に伝えることで、従業員の行動を正しい方向へと向けていく努力を日々続けていることで、トヨタはエクセレントカンパニーになってきたのです。
ニュースレター、今回は「同調圧力」という我々が陥りがちな典型的な心理を元に考えてみました。
Asian Identityでは人事向けの講座「HRカレッジ」や、リーダー向け講座「Identity Leadership Workshop」でこうした理論と実践をつなげた学びの機会をご提供しています。ぜひ興味があれば講座にもお越しください。
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