AI NEWSLETTER Vol.39
AUG , 2020
「コロナが職場から奪う“リフレクション”」
コロナウィルスが世界を襲ってから半年以上が経過し、社会は徐々に「ニュー・ノーマル」と呼ばれる状態に移行しています。タイでの市中感染はゼロが続いていますが、引き続き油断は出来ない状況と言えるでしょう。
コロナ以前と今を比べて、企業において何が違うのかを考えたときに、私は「リフレクション(内省、振り返り)」が減ってしまうことが一つのリスクではないかと思います。そこで今日は「リフレクション」について書いてみます。
内省とは、人と組織の成長に欠かせないもの
内省(リフレクション)とは、つまり「行動を振り返り、そこから概念を引き出す」行為のことです。それを指して、conceptualization(概念化)という言葉を使うこともあります。
分かりやすい例としては「日記を書く」という行為です。あるいは会社としてレポートを課すこともあるでしょう。毎日、あるいは毎週、こんなことがあったな、と振り返ったり、またそこからの気づきや学びを考える。そんな行為のことをリフレクションと呼びます。
リフレクションは、自分の中にあるモヤモヤとした気持ちを概念(コンセプトにする)、つまり「言葉を当てはめる」という行為です。なぜ言葉にするかというと、言葉にならないうちは学んでいるとは言えないからです。もう少し正確に言うと、言葉になっていないと、学んでいるかもしれないが、それが行動に繋がる確率が低いのです。
例えば仕事で失敗をして上司に叱られたとします。その時は反省するかもしれませんが、また同じ失敗を繰り返す人がいます。そういう人は、リフレクションが足りていないと言えます。
失敗をした後に「なぜ失敗したのか」「どうすれば失敗しないのか」を立ち止まって考えることで、「次は失敗しないように、これに気をつけよう」という教訓を初めて得られるのです。
この、「経験を教訓にする」という行為が出来るかどうかが、分かれ道です。つまりは成長、特に内面的な成長とは「教訓の積み上げ」であると言っても過言ではありません。内省する習慣がある人というのは、日々この「教訓の積み上げ」を行っていると言えます。
一流のスポーツ選手も、かならず日記をつけているそうです。これは、ただ毎日練習をするよりも、“考えながら”練習をする方が、やり方に改善がもたらされるため変化・進化に繋がりやすいからです。
コロナがリフレクションを減らす?
リフレクションは、一人で考えているだけでは、なかなか上手にはできないものです。内省には良質なきっかけが必要です。
最も重要なきっかけは「問いかけ」です。
先ほどの失敗の例でも、上司や先輩と会話をし、「もう一度やるとしたらどうやったらいいと思う?」と上司に聞かれたりすると、「もっと人を巻き込んだら失敗しなかったかもしれない」「過去の調べてから取り組めばよかった」などのように考えが浮かんできます。
リフレクションが上手な人は自分自身で問いかけが出来ますが、誰もがそれをできるわけではありません。やはり上司や同僚からのコミュニケーションは内省のためにとても重要だと言えます。
また、考えるためのきっかけとなる、「材料」も必要です。
日々、偶然出くわす出来事だったり、接触する情報というものはリフレクションのきっかけをくれます。この考え面白いな、そういえば別の仕事のアレにつなげられるな、、、。そうした材料との出会いでもまた内省は大いに促進されます。
リモートワークの影響で職場の雑談が減りました。また、ソーシャルディスタンスで、会社の食事会やパーティーが減りました。それらは、単に楽しみを与えるだけでなく、新しいヒントや気づきを与える役割も果たしていました。
コロナウィルスによって、職場での人と人の接触が減った結果、周囲からの自然発生的な問いかけが減り、適切な材料との出会いも減ってしまう、ということが起きていないでしょうか。
これでは、知らないうちに起きていた個々の成長、またその相乗効果による組織学習が停滞するということが起きてしまうし、既に様々な組織で起き始めていると思う。これがWithコロナ時代の一つの組織課題ではないかと思います。
自然発生的なリフレクションから「意図的にデザインされたリフレクション」へ
たどり着いた結論は「意図的にデザインされた内省」を組織の中に埋め込んでいくということです。
人との接触が減る中で、自然発生的な内省を期待するだけでなく、以下のような要素を意識して、意図的なプロセスを設計していくべきだと思います。
まずは、「振り返りを習慣化するルーティンを作る」こと。
オンラインのミーティングだと、どうしても議題のみにフォーカスしがちになります。そうではなく、あえて「振り返るための時間」を会議に取り入れたり、あるいはSlack等のコミュニケーションツールで振り返りスレッドを作るなどして、振り返りをシステム化することです。
そしてその内省は必ず組織で「共有・蓄積」されるようにします。いわば組織内での教訓の積み上げです。
その際に特に意識したいことは「読まれることを意識してアウトプットする」ということです。自分にとっての重要な気づきも価値がありますが、それ以上に、一人に役立つ教訓よりも、多くの人に役立つ教訓の方が組織にとって価値が高いと言えます。
そしてそれに対して「フィードバック」を与えあうことも大切です。
FacebookにLikeというリアクションボタンがあるように、フィードバックをもらえることで人はより考えるようになり、また次回も発信する意欲が湧いてきます。
上司がコメントをしないと部下はレポーティングしなくなるのと同じで、共有された良い教訓にはリアクションしていく仕掛けが大切だと思います。
以上、「内省を促進するための意図的なデザイン」について述べてきました。コロナウィルスにより、組織の学習、成長のスピードが落ちていると感じる場合は、「リフレクション」が少なくなっていないか、一度組織の状態をチェックをしてみてください。
*タイ語バージョンはこちらです。是非、タイ人のご友人や同僚に共有してください。
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