AI NEWSLETTER Vol.13
APRIL , 2018
今回のテーマは「異文化」です。といってもタイの文化、日本の文化、といった話ではありません。文化によるコンフリクトとはどのようなもので、私たちはどうすればそれを乗り越えて行けるのか、ということについて考えてみたいと思います。
異文化環境のコンフリクトに対応する
事実を見ずに先入観で人を判断する「カテゴリー・バイアス」
弊社では日本人とタイ人それぞれを相手に「異文化」をテーマにしたワークショップを行うことがあります。よく双方から挙がってくる典型的なトピックは、以下のようなものです
「日本人は、マイクロマネジメントでプロセスに細かい」
「日本人は、ハードワーカーで家族を大切にしない」
「タイ人は、仕事に対する責任感が無い」
「タイ人は、仕事の情報を共有しない」
などなど。もちろん一部には当てはまるケースもあるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。実際には、家族を大切にする日本人もいますし、責任感の強いタイ人もたくさんいます。こうした「〇〇人は・・・」という考え方はものの見方を固定的にしてしまうので注意が必要です。
これは「カテゴリー・バイアス(Category Bias)」と言われる現象です。人間の脳はパターンに当てはめて情報を処理したい傾向があるので、我々はつい「〇〇人は・・」という判をしがちです。またこうしたバイアスはどうしてもネガティブな解釈の方に働きます。こうして、事実と異なったイメージを相手に持ってしまい、人間関係が悪化していきます。
客観性を担保する「3 EXS」
異文化コミュニケーションにおいて大切な姿勢を表した、「3EXs」というフレームワークがあります。Explain:事 実に基づき状況を説明する、Examine:背景や意図を多面的に検討する、Execute:判断し、対応する、という3つの ステップです。
例えば、日本人は「タイ人は情報共有をしない」という不満を良く持ちます。そこで「だからダメなんだ」と判断してしまうのは危険です。まずは事実をしっかりと確認しましょう。報告をしてくれている場面は無いのか。どういう情報が共有されていないと感じるのか。
その後で、その背景や意図を多面的に検討します。情報共有をしてくれないのは、上司がオフィスにいないからかもしれない。日本では上司の時間を押さえるのは当たり前だが、タイには上司をより敬う文化があるので遠慮をしているだけかもしれない。情報共有のルールを自分が明確にしていないからかもしれない・・・等。様々な可能性を洗い出していきます。こうすると、ややもすると自分の見方が固定化していたことに気づきます。
最後に、問題の原因が何で、どういう手を打つべきかを判断するというステップです。
文化や言語が異なる人と仕事をするというのは大きなストレスです。皆さんの職場にもたくさんのストレスがあることでしょう。ストレスがたまると、人は感情的になったり、冷静さを失って人を判断してしまいます。特に若いうちはそういう傾向があるでしょう。
しかし、リーダーに求められるのは冷静さと、成熟した姿勢です。職場にはびこる感情的な反応や決めつけを、きちんと事実に基づいて対応していくマインドセットを持ち、それをメンバーに教えていかなく てはいけません。3EXs の3つのプロセスで冷静に物事を対応できる人が職場に増えると、職場のストレスは徐々に減っていきます。
「人」の見方にこそ「自分」が表れる
このように、ものごとというのは簡単に決めつけられるものではありません。
例えば私はシンガポールに時々行きますが、シンガポールという街については、「先進的で、清潔で好きだ」という人もいれば、「画一的で、つまらない」という人もいます。でも、見ている事実は同じです。 シンガポールはシンガポールです。そこにあるのは、見ている人の「先進的なものが好きだ」「画一的なものは嫌いだ」という価値観や好みの違いだけです。
そして、「人」を見るときにこそ、その人の価値観は一番よく現れます。ある人間について何かを感じるとき、その人がどうであるかを論じる前に、そう感じている自分自身を見つめてみることも大事です。
こんな言葉があります。
”Judging a person does not define who they are. It defines who you are.”(人を判断するとき、それはその人がどんな人かを決めるの はない。自分がどんな人間かを決めているのだ)
こうしたマインドセットを一人一人が持っている組織が、本当に成熟した組織であると思います。少なくともリーダーはこうした考え方を備えていないと、感情的になったり、組織の問題をコントロールして いくことは難しいかもしれません。異文化環境で仕事をする我々一人一人が肝に銘じておきたいポイントとして、ご紹介しました。
読者からの相談コーナー
Asian Identity の 人材コンサルタ ントがマネジメントを担う方へのおス スメの本はありますか? (No.4)
Reverse Innovation 〜新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき
by Vijay Govindra and Chris Trimble
従来、イノベーションとは先進国から始まり、新興国に拡大していく、と考えられていました。しかしながら、近年は従来とは異なるイノベーションの流れもあります。
リバース・イノベーションとは、新興国で現地のニーズを元にゼロから開発した商品やサービスを先進国市場に展開・流通させる戦略を指します。こちらの本では、GE やペプシコなどの多国籍企業を実例として新興国市場にいるライバルとの向き合い方、先進国での経験をどう白紙に戻しゼロベースで考えるか、イノベーションを生み出す人材育成とは、といった内容を踏まえ、新興国から世界にビジネスを波及させるメカニズムを学ぶことができます。 これまでの成功体験や従来のやり方に捉われず、新しい市場を創造することが求められるビジネスパーソンへお勧めの本です。
AI college 5月・6月開講予定講座のご案内
HR COLLEGE (人事の学校) 評価・報酬編
5月11日・12日(金・土 )2日間連続講座 THB12,000 (日本語&タイ語)
人事制度を体系的に学べるセミナーの評価・報酬編、2日間コースです。人事制度とは何か、という点から等級、評価制度の設計、運用方法、報酬制度の設計方法などを主なトピックとし日本から人事のプロフェッショナルをお招きして知見・経験を元にセッションを実施します。
日本人管理者とタイ人HRと一緒に学んでいただけるよう、2言語での運営となっています。
日時: 5月11日・12日(金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 12,000 THB (VAT別)
自分の人生の軸を見つける・IDENTITY LEADERSHIP WORKSHOP (IDL)
5月17日・18日・19日(木・金・土)
3日間連続講座 THB28,000 (日本語&タイ語)
3日間、深く自分と向き合い、自分自身のリーダーとしての在り方を明確にしていく内省型のワークショップ。経営者、マネジャーなど強いリーダーシップを必要とするポジションの方にお勧めのプログラムです。毎年、多くの参加者から「一生忘れられない経験になった」とお声を頂きます。
一年に一度の貴重な機会となりますので、是非参加をご検討ください。
日時: 5月17-19日(木・金・土 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 28,000 THB (VAT別)
地頭力を鍛えるロジカルシンキング講座 「JI-ATAMA LOGICAL THINKING WORKSHOP」
6月22日(金)1日間講座 THB6,000 (タイ語)
予測不可能な時代には、インターネットで検索すれば得られる回答や既存の考え方に捉われず自らの頭で考えて答えを探し出す力が必要です。このような自らの頭で考え、新しい価値を生み出す力は思考のトレーニングで身に着けことが可能です。本講座ではケーススタディを通して、地頭力を表す仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力といった考え方を学び、職場への実践に結びつけていきます。
日時: 6月22日(金 )9時〜17時
場所: Asian Identity セミナールームにて(トンローソイ10)
料金: 6,000 THB (VAT別)